さすらいの青春」は、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督のカルト作「わが青春のマリアンヌ」(1955)に似ていると評判だった。ただ「さすらいの青春」の作品の原作はフランスのアンリ・アラン・フルニエが1913年に書いた青春文学「グランモーヌであり三島由紀夫も評価するほど世界中で広く読まれている。一方「わが青春のマリアンヌ」の原作者ペーター・ド・メンデルスゾーンはドイツ系ユダヤ人で、1932年に幻想文学「わが青春のアルカディア」(「わが青春のマリアンヌ」原作)をドイツで出版した。さらにそれは1935年にフランスで翻訳されている。従ってメンデルスゾーンの方がフルニエに影響を受けた可能性がある。デュヴィヴィエが「グランモーヌ」の映画化権を得られなかったため、仕方なく「アルカディア」を映画化したという噂もある。

原作「グランモーヌ」自体がフルニエの私小説っぽいところがある。「さすらいの青春」19世紀末の男子寄宿学生の恋バナ。パリの南に行くとオルレアンがあるが、さらに南に行くとソローニュ地方がある。そこに寄宿舎学校はあった。主人公は「グラン(大きな)モーヌ」と言われたオーギュスト・モーヌで、話の語り手は寄宿舎学校の校長の息子であるフランソワである。

 

監督 ジャン・ガブリエル・アルビコッコ
製作 ジルベール・ド・ゴールドシュミット
原作 アンリ・アラン・フルニエ
脚色 ジャン・ガブリエル・アルビコッコ

配役
イヴォンヌ  ブリジット・フォッセー(「禁じられた遊び」)
オーギュスティン  ジャン・ブレーズ
フランソワ  アラン・リボール
フランツ  アラン・ヌーリー
ヴァレンティーヌ  ジュリエット・ピラール
Monsieur Seurel マルセル・キュブリェ
Madame Seurel テレーズ・ヤンタン

 

フランソワは寄宿舎学校校長の息子で悪ガキどもとともに学ぶ。ある日、背に高いオーギュスト・モーヌが転校してくる。最初は珍しさもあって人気者になる。ある日、校長の馬を連れて遠出をしたまま、帰らなくなる。二、三日後突然戻ってくるが、学友の矢継ぎ早の質問にも答えない。ただ夜になってフランソワにだけは不思議なことがあったと次のような話を語る。

森の中でモーヌはフランツと呼ばれる青年の結婚式に迷い込み、イヴォンヌという女性と運命的出会いをする。しかし弟フランツが結婚式で自殺を図った上、逃げてしまって、イヴォンヌは絶望のあまりパリへ移る。

実は振られたフランツは自暴自棄になりサーカス団に入っていた。フランツは身分を隠してフランソワ、モーヌと仲良くなったが、ピエロの盗みがバレた夜に正体を明かして町から消える。モーヌもまたイヴォンヌを探すためにパリへ転校して行く。

モーヌからフランソワへ二、三度手紙が来る。パリにイヴォンヌはいなかったが、代わりに女性ヴァレンティーヌと知り合いになった。彼女はフランツのことをよく知っているようだ。

一方、フランソワは卒業してから寄宿舎学校の教師になるが、そこで偶然イヴォンヌと出会う。

慌ててフランソワはパリへ行ってモーヌと会う。モーヌは旅に出る直前だったが、イヴォンヌのことを聞いて、ともにイヴォンヌの元にやって来る。そしてモーヌはイヴォンヌと愛を確かめ合い、二人は結婚式を挙げる。しかしモーヌはその場にフランツがやって来たことを知ると翌日忽然と消えてしまう。不安を覚えながらイヴォンヌはモーヌを子を身ごもていたが、フランソワの支えによって無事出産する。イヴォンヌ自身は産後の肥立ちが悪くて亡くなってしまう。

モーヌは結婚式から一年経ってフランツ、ヴァレンティーヌとともに戻って来る。実はヴァレンティーヌこそがフランツを袖にして結婚式から逃げた女だった。モーヌはかつてパリでヴァレンティーヌと一夜の過ちを起こし、旅に出ようとしたところにフランソワが呼びに来たのである。しかし結婚式の日にヴァレンティーヌをまだ愛しているフランツが現れたことでモーヌは自責の念を覚え、再びパリへ行きフランツとヴァレンティーヌを和解させるのに一年もの時がかかってしまったのだ。こうしてフランツはかつて許嫁だったヴァレンティーヌと結婚した。モーヌは赤ん坊を抱いてパリへ帰って行く。

 

パリへ行った後、モーヌからフランソワに手紙が来るのだが、モーヌがヴァレンティーヌとの関係の深さを適当にぼかしたため、一番肝心なところがフランソワには伝わらない。

フランソワの役割は狂言回しだが、本気でイヴォンヌに惚れていたはずなのに、何も良いことはなかった。想いも伝えられなかったはずで主役にもなれず損な役回りだった。

モーヌは本当にイヴォンヌを愛していたのか。劇中でもイヴォンヌが疑っていたように、モーヌはイヴォンヌの財産目当てだったが当てが外れたのではないか。どうも彼の行動は身勝手にすぎると思う。妻子のことを忘れて、一年かけてよその夫婦喧嘩の仲裁するなんて信じられない。

結局可哀想なのはイヴォンヌであり、イヴォンヌに気持ちを伝えられなかったフランソワではないか。フランソワにはついつい感情移入してしまう。

モーヌはヴァレンティーヌと結婚してフランツと決闘でもすればいいのだ。そしてフランソワはイヴォンヌと結婚した方が良かった。イヴォンヌは結婚してからモーヌに再会しても不倫するタイプではない(と思う)。

ちなみに原作者はヴァレンティーヌのモデル女性と一緒になったが破局したらしい。その後、第一次世界大戦に従軍、戦死した。

イヴォンヌ役はブリジット・フォッセーが演じる。かつて『禁じられた遊び」で女の子役を演じていたあの子が大人になって映画界に帰ってきたのだ。決して美人でない。また若いはずだが若く見えない。落ち着いている。彼女が好みであれば無条件にこの映画を愛せるだろう。

 

さすらいの青春 1966 フランス

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