「レニングラードカウボーイズ」で人気のアキ・カウリスマキ監督（フィンランド）が1996年に撮った名作。その独特の文体にファンも多い。成瀬巳喜男監督のとことん不幸になる名作映画「浮雲」にインスパイヤされている。
イロナはレストランの女給、夫のラウリは市電の運転手。ローンでカラーテレビをようやく買えた貧しい夫婦。
しかし夫はリストラのため、妻はレストランの買収により突然解雇されてしまう。途方に暮れる二人だったが、夫はロシア行きの長距離バスの運転手に採用される。喜び勇んで出社する彼だったが、健康診断で疾病が発見され、運転免許まで取り上げられてしまう。プライドの高い夫はぶち切れてしまい失業保険すらもらおうとしない。
一方、妻も街の食堂に職を得るが、その食堂も税務署の調査が入って、潰されてしまう。妻の未払給与を催促に行った夫は、逆に叩きのめされてしまった。
とうとうテレビまで差し押さえられてしまい、妻は最後の手段として自分でレストランを開くことを計画するが、無担保で銀行は融資してくれない。夫は自家用車を売って、カジノで一攫千金の勝負に出るが、全額すってしまう。
やることなすこと、みんな駄目だ。果たして、この夫婦に明日は来るのか？
ただひたすら、悪いことが重なって、どんどん悲惨な方向に落ちていくのだが、悲壮感が感じられないどころか滑稽ですらある。そこが本家「浮雲」との大きな違いだ。
主人公夫妻は、極力感情の露出を押さえ、淡々とした演技に終始する。要するにヘタウマ演技だ。
これがカウリスマキ演出なのだが、好きな人はとことん好きになっちゃうだろう。演技や筋書きよりも、独特な雰囲気を楽しむ映画です。
監督・製作・脚本 アキ・カウリスマキ
撮影 ティモ・サルミネン
音楽 シェリー・フィッシャー 、 ユッカ・サルミ
配役
イロナ カティ・オウティネン
ラウリ カリ・ヴァーナネン