1960年頃は1956年オリンピック・アルペン三冠に輝くオーストリアのトニー・ザイラー(このときの回転競技の銀メダルは猪谷千春)が俳優へ転向し、「白銀は招くよ」や松竹映画「銀嶺の覇者」に主演して話題となった。東宝も遅れてならじとスキーアクション映画を、当時「独立愚連隊」シリーズで台頭していた新鋭監督岡本喜八を起用してぶつけてきた。岡本監督からすれば、会社に押しつけられたプログラムピクチャーだったが、それでも与えられた条件下で自由自在に撮影できたようだ。

 

むくつけき学生5人組は北アルプスの処女峰“天狗の壁”をめざして進んでいた。うら若き丸久デパートガール(DG)5人組はその北アルプスでスキーを楽しんでいた。丸久デパートの社長(上原謙)はスキーブームに便乗して丹波山荘をスキー客専用の山小屋にしたいと考えて現地に向かった。しかし急な吹雪に襲われ、みんな丹波山荘に避難した。そこには夫に先立たれて頭のネジが緩んでしまった未亡人(越路吹雪)と下男、そして夫の亡霊(上原謙の二役)が暮らしていた。ギャングらが警察に追われていたが、雪崩のおかげで下山することができなくなり丹波山荘にやってくる。銃を持つギャングは簡単に住人と学生たちを制圧して、残りわずかな食糧を独り占めする。しかしギャングのボスが急性盲腸になる。幸い医学生がいたので、手術は済んだがしばらくは動けない。食糧のないまま一週間が経った。学生のリーダー「お頭」(山崎努)は窮余の策として冬は無人の山小屋に食糧を探しに行き「税務署」(江原達怡)は救援隊を呼びに命がけで山を下った。お頭は無事帰還したが食糧はギャングに奪われた。学生たちの怒りが頂点に達したとき、亡霊が姿を現した。

 

岡本喜八らしい群集アクション映画だ。彼の映画にしてはめずらしく女性が大勢出演するが、男性が女性にビンタをするシーンがあり多少男尊女卑だからもっぱら男性映画である。5人の学生対2人のギャングの神経戦を描いている。
しかし上原謙、越路吹雪の年長組をコメディアン、コメディエンヌとして活用する辺りは新鋭監督とは思えない采配のふるいようだ。救援隊長役の鶴田浩二は殆どストーリーに関係しないし、ラストに藤村有弘を南国の皇太子役で起用し謎のイタリア語を喋らせるがその前を我関せずで学生とDGがスキーで下山する辺り、監督のやりたい放題だった。

ちなみに山崎努はこの映画がデビュー作だ。彼は前年文学座に入団したばかりだった。

 

監督 岡本喜八
脚本 岡本喜八 、 関沢新一
製作 山本紫朗
撮影 飯村正
音楽 佐藤勝
配役
お頭 山崎努
宇宙 久保明
胃袋 佐藤允
税務署 江原達怡
ギネ ミッキー・カーチス
姐御 白川由美
カレー 横山道代
オシメ 上原美佐
未亡人 越路吹雪
社長 上原謙
支配人 平田昭彦
ギャング・ケン 中丸忠雄
部長刑事 土屋嘉男
先輩湯山 鶴田浩二
南国の皇太子 藤村有弘

 

大学の山賊たち 1960 東宝

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