伝説の国語教師・橋本武先生が101歳で亡くなった。
灘中高の国語教師として長年スローリーディング(精読)授業を続けてきて、灘を東大合格者数No.1に押し上げた実力者だった。
教え方は中勘助の自伝的小説「銀の匙」をわざわざ中学三年間かけて精読するというもの。
小説に明治時代のお菓子の名前が出てくると学生は何であるかわからない。
だから、それを手配して授業中に生徒全員に食べさせた。
百人一首を乳母が主人公に教える話が出てくると、クラス全員で百人一首大会の真剣勝負である。
たこあげの様子が描かれていたら、美術の時間にたこを作らせて、たこあげ大会を開いた。
黒岩神奈川県知事は劣等生だったが、当時流行していたピンキーとキラーズのたこを作ったことは忘れられない思い出だそうだ。
いわば体で覚える実体験型で脱線しまくりの楽しい授業だった。
干支など、今の中学生がわからない言葉が出てくると何時間もかけて説明プリントを使いどんどんテキストから離れていった。
しかしおかげで灘中高生は普通の受験勉強から得られない考える力、一般常識や教養を身につけることができた。
そしてそれが結局東大合格につながる。
東大は入試に奇問難問を出さない学校だからである。
灘や兵庫県の教育に革命をもたらした橋本先生のご冥福をお祈りします。
宝塚歌劇評論家でもあった先生だから、追悼の会は灘中高出身の政財界の要人やタカラジェンヌを交えて華やかなものになるだろう。
今や橋本先生の孫弟子が灘中高の教壇に立つ時代だけど、それでも国語の授業には橋本イズムが生かされている。
身内や友人も何人か灘出身者がいる。
彼らが単なる頭でっかちではなく、きわめて常識人であるのは、そういう国語教育があったからだ。
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