NHKBSの金田一耕助短編集の中の一編だが、主演の金田一は童顔の池松壮亮であり、「獄門島」を好演した長谷川博巳ではない。また若手演出家が一作ずつ担当している。妹に教えられるまでこのシリーズの存在すら知らなかったので第一作「黒蘭丸」はリアルタイムで見損ねた。
この第二作「殺人鬼」は推理作家が美しい婦人と夜、出会うところから始まる。終戦直後であり、近所で連続殺人鬼が出現し夜道は物騒だったので、婦人は同道を求めたのであった。すると確かに黒眼鏡に義足の男が二人の後をつけてくる。一週間後、婦人がまた義足の男に追われていると、作家の部屋に飛び込んでくる。
この短編は原作に忠実に作られている。江戸川乱歩風だと思っていたが、演出家佐藤佐吉は小説の終戦色が弱めて、婦人役の福島リラの個性を中心に描いている。ときには彼女が宇宙人に見えた。実相寺監督以外の円谷プロ「怪奇大作戦」や「ウルトラセブン」に演出の感じが似ていた。
僕はモデル出身の福島リラを大河ドラマ「黒田官兵衛」の一向宗を信仰する侍女役(後に栗山善助の妻)で初めて知った。そして日本映画「ささらさや」でもヤンキーママ役で好演しているのを見た。すでにアメリカ・オーストラリア合作映画「ウルヴァリン」でハリウッドにも進出している。彼女の個性の強烈さは万国共通である。
殺人鬼(金田一耕助短編)2016 NHKBSドラマ