16世紀にヘンリー8世が、ローマ教皇に逆らってまで再婚したアン・ブーリンの半生記。

製作は名プロデューサーのハル・B・ウォリスで、監督はテレビ界出身のチャールズ・ジャロットが務める。マクスウェル・アンダーソンの舞台劇をブリジット・ボーランドジョン・ヘールが脚本化し、リチャード・ソコラヴが脚色している。衣装は、マーガレット・ファースが担当し、アカデミー衣装デザイン賞を受賞した。同年のゴールデングローブ賞では、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの主演女優賞の他、主要三部門(作品、監督、脚本)でも受賞している。

主演はリチャード・バートン、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。共演はアンソニー・クエイル、ジョン・コリコス、イレーネ・パパス。カラー映画。

あらすじ

1526年、宮殿の舞踏会でヘンリー8世は、愛人の妹アン・ブーリンを見初めた。ヘンリーは、正妻カサリンとの間に後に出来た王子が夭折し、その後娘(後のメアリ1世)しか持てなかったことに不満だった。そこで勝気なアンなら王子を産んでくれるのではないかと思い、猛然とアタックを掛ける。しかし、パーシーと婚約していたアンは、ヘンリー8世に対して冷たい。ヘンリーは、パーシーを無理矢理、他の娘と結婚させて、アンをカサリン王妃の侍女という名目で宮廷に呼びつけた。
アンは正妻なら結婚しても良いと、ヘンリーにカサリンとの離婚を迫る。ヘンリーは、カトリックで認められていない離婚をしようとするが、自分の幼少期の教育係であった枢機卿ウルジーが邪魔になる。ウルジーの部下だったクロムウェルは、ヘンリーに悪知恵を付ける。すなわち、ヘンリーが英国教会のトップとなり、王の結婚を無効化することを進言した。ヘンリーは、その案を受け入れ、ローマとの交渉に失敗したウルジーを処刑する。さらにその後任者であるトマス・モアまで死刑に処す。
アンは、そこまでするヘンリーの情熱を認め、ついに抱かれる。しかし、ヘンリーとアンの結婚式で、カサリン贔屓の民衆は罵詈雑言を新王妃に浴びせた。カサリン元王妃は、長く床に臥せり、娘メアリがイギリス女王になることを願った・・・。

雑感

まず、ヘンリー8世カサリン王妃の関係は、複雑である。ヘンリーの兄アーサー王太子がカサリンと結婚するが、すぐ病気で死んでしまう。そのとき、アーサーと関係があったかが問題となる。カトリックでは兄弟の妻を娶るのにいろいろと支障があるからだ。スペイン側はカサリンの次の英国王に嫁がせたいので、関係はなかったという女官の意見が採用され、カサリンはスペインに帰ることを許されなかった。実際、二人には関係があったと言う説も有力である。
それから父ヘンリー7世が亡くなった際、次男ヘンリー8世が王位を継承するが、カサリンと結婚することが条件付けられた。しかも4才年上である。それでも息子が早く生まれていれば、問題はなかったのだが、ようやく産まれた王子がすぐ死んでしまった。すでにカサリンは33才になり、体も弱くなり、もう子供は産めない。一方、アンは正妻でなければ、一緒になれないと言う。こうして、離婚も止むを得ずと考えるヘンリーのために、法律家たちが抜け道を探し出した。

では、なぜ女王を認める英国でヘンリー8世は、男の子を次の王に欲したのか?それは薔薇戦争のおかげで欧州列強より弱体化した英国が、今後さらに困難な時代を迎え、その時代を女王では治められないと思い込んだためである。実際は、女王で何の問題もなかったのだが。

ヘンリー八世の死後、健康でなかった世継ぎエドワード6世(ジェーン・シーモアの息子)は早世し、英国では血の粛清が巻き起こる。
すなわち、王位継承第一位のメアリ女王(カサリンの娘)が王位に就く。彼女はカトリックであり、プロテスタント化していた英国国教会を悉く弾圧した。
しかし病気で亡くなるため、メアリ女王の治世も5年しか続かなかった。彼女は、プロテスタントによる反乱を企てたとして幽閉していたエリザベスを王位継承者として指名した翌日にこの世を去る。

それからの「処女王」エリザベス一世の活躍ぶりは皆の知るところだ。父が母を裏切り死に追いやったことを忘れないエリザベスは、一生結婚しなかった。

当時の王族の婚姻は宗教と切っても切れない関係にあった。ローマ教皇に何事も許可をもらわねば、カトリックは結婚できなかった。それを、イギリスは、クロムウェルの悪知恵で離婚を合法化して、ローマと絶縁してしまった。これがイギリスでの宗教改革の第一歩である。
このクロムウェル卿の姉妹の子孫が清教徒革命を成し遂げたオリバー・クロムウェルである。

リチャード・バートンは、輪郭がヘンリー8世の肖像画とそっくりだ。
ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドは、アン・ブーリンの激しい性格を熱演だった。あの頃の彼女は美しかった。こういう女性に限って、女腹なんだなあ。
イレーネ・パパスは、ギリシャ人女優だが、「ナヴァロンの要塞」、「その男ゾルバ」、「Z」に「マッキラー」まで出演し、日本人にも馴染みが深い。

スタッフ

製作  ハル・B・ウォリス
監督  チャールズ・ジャロット
脚本  ブリジット・ボランド、ジョン・ヘール
原作戯曲  マックスウェル・アンダーソン
撮影  アーサー・イベットソン
音楽  ジョルジュ・ドルリュー
衣装  マーガレット・ファース (アカデミー衣装デザイン賞)

 

キャスト

ヘンリー8世  リチャード・バートン
アン・ブーリン  ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド
キャサリン王妃  イレーネ・パパス
ウォルジー枢機卿  アンソニー・クェイル
クロムウェル卿  ジョン・コリコス
トーマス・ブーリン(父)  マイケル・ホーダーン
メアリー・ブーリン(姉)  ヴァレリー・ギャロン

***

やがてアンは長女(後のエリザベス一世)を産んだが、その後に生まれた王子は死産だった。すでに侍女ジェーン・シーモア(エドワード6世を産んだ後、産褥死した)と関係を持っていたヘンリーは、アンに離婚(結婚の無効化)を迫る。しかし頑としてアンは、結婚の無効を認めなかった。
それに対して、クロムウェルは再び悪知恵を使い、アンを姦通罪と近親相姦罪(冤罪)で訴える。わずか千日だったが、アンはイギリス王妃として、フランスから招いた死刑執行人に掛かって処刑される。母が身を呈して守ってくれたエリザベスは、まだ三つだった。

1000日のアン Anne of the Thousand Days (1969) ハル・ウィリス製作(英) ユニバーサル配給 エリザベス一世の母アン・ブーリンの半生記

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