上映時期として松本清張原作「黒い画集」シリーズの第三弾なのに第二話扱いされてしまった作品。
「黒い画集 サラリーマンのある証言」同様に不倫を扱っているが、嫉妬心により社会的地位を追われるサラリーマンを描いている。
主演は池部良、共演は新珠三千代、平田昭彦。白黒映画。

あらすじ

銀行員沖野は大学の同級生で前頭取の息子、常務の桑山に強引に引き上げられて池袋支店長に就任する。沖野は挨拶廻りで豪華な料亭の主人前川奈美と知り合った。
ある日、奈美が増築のため一千万円の融資を頼みに来た。沖野は彼女の店の経営状態からみてこの貸付の実行を桑山に強く推した。それから沖野と奈美は親密さを増し、やがて奈美は沖野と体の関係を持った。奈美は5000万円の追加融資を申し出るが、沖野の判断ではそんな大金を動かせない。
奈美が沖野に会いに池袋支店に来た時、桑山が訪ねて来た。奈美に一目惚れした桑山はゴルフに沖野と奈美を誘った。桑山は沖野が寝ている隙に追加融資をエサに奈美を口説いていた。

東京から帰ってから、沖野は桑山常務により北関東僻地にある支店に転勤させられた。奈美に会いにいくが、彼女の気持ちは出世街道から滑り落ちた沖野に既になかった。
嫉妬に狂う沖野は探偵に桑山と奈美の関係調査を依頼した。探偵は二人が肉体関係を結んでいることを突き止め、さらに不正融資により奈美は新しい店を出している事も掴む。沖野は総会屋福光に面会し、桑山常務の不正を訴えた。しかし桑山は逆に大金を掴ませ福光を買収し、福光は沖野を叱り付け詫び料をとる。さらに桑山はヤクザを送り込み、沖野を脅す。
面目を潰された沖野は探偵と共に別の計画を立案した。渋谷の連れ込み旅館で桑山が奈美と逢っている最中、沖野は桑山の車を同型車とすり替え、桑山が乗車したところで警察に車が盗まれたと通報した。桑山と奈美はパトカーに捕まった。
だが銀行は事件のもみけしを図った。おそらく桑山は安泰であろう。沖野はヤクザに何をされるやら。

雑感

暖流と寒流とは銀行の主流派閥に属するか傍流かの違いを表している。桑山は元頭取の息子だから主流派である。
桑山に嫌われた沖野は主流から追いやられ寒流に移ったわけである。沖野は桑山の同級生であるが、敬語でしか会話できず、上司対部下=支配被支配の関係にある。おそらく学生時代から女との別れ話で使い走りにこき使われてきたのだろう。さらにようやく支店長の座を射止めて、奈美を手に入れた。ところが後からやって来た桑山に奪われて頭に来たわけだ。
奈美の立場からすれば、モテモテの桑山の前でペコペコしている沖野を見て、愛想が尽きたのもよく分かる。

現在は「第二話」という題名は省略されているが、公開時は短編集「黒い画集」からの第三弾にも関わらず「第二話」と付いていた。プロデューサーが第一話と第三話が同一なので、そのような題名がついているが、東宝内部の官僚主義的な縦割り行政ぶりが感じられるタイトルだ。不倫映画としては第一話より数段落ちる。山岳映画になった「黒い画集 ある遭難」と比べても出演俳優の割に出来が良くない。

スタッフ

製作 三輪礼二
原作 松本清張
脚色 若尾徳平
監督 鈴木英夫
撮影 逢沢譲
音楽 齋藤一郎

キャスト

沖野一郎 池部良
沖野淳子 荒木道子
前川奈美 新珠三千代
桑山常務 平田昭彦
頭取 小川虎之助
副頭取 中村伸郎
田島前支店長 小栗一也
伊牟田博助 宮口精二
福光喜太郎 志村喬
福光の情婦 北川町子
ヤクザ山本甚造 丹波哲郎
女中頭お時 梅野公子
探偵社事務員 西条康彦
医者 浜村純

黒い画集 第二話 寒流 1961.11 東宝東京製作 東宝配給

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