谷崎潤一郎の戯曲「無明と愛染」を新藤兼人が脚色して、三隅研次が監督し、南北朝時代の四角関係を描いた作品。撮影は宮川一夫。
主演は勝新太郎、高峰秀子、新珠三千代、佐藤慶。
あらすじ
南北朝期、山寺に無明の太郎という盗賊が美しい白拍子の愛染と同棲していた。ある日、太郎の正妻楓が訪ねて来た。太郎と愛染は邪険にしたが、彼女はいつしか寺に住み着き、太郎は妻妾同衾となる。
それから半年後、高野山の上人が訪れた。楓は自分と無明が寺で暮らしているところを愛染が入り込んだと嘘をつく。しかしその様子に愛染は気づきニヤリと笑う。上人は、楓にこそ愛染を憎む心の中に鬼が住んでいると説教し、太郎にはお経を唱えて改心させる。
しかし、上人は愛染を見て動揺する。彼は若い頃に愛染を争って恋仇を斬ったがため、仏門に入ることになったのだ。愛染は、彼を本堂に誘い全裸になり誘惑した。上人は事が済んでから恥ずかしさのあまり自決した。愛染は上人の体に唾を吐く。それを見て太郎は、愛染を切り捨てる。
雑感
結局、寺には四人の鬼が住んでいたというわけだ。
勝新太郎は文芸ものが合わず棒演技だったが、高峰秀子、新珠三千代は珍しく大映作品に出演して、いつもと違う役柄を演ずる。
新珠三千代が佐藤慶をたぶらかすため、全裸になって誘惑するシーン。どう見ても別人である。あそこだけが残念。
スタッフ・キャスト
監督 三隅研次
製作 永田雅一
原作 谷崎潤一郎
脚色 新藤兼人
撮影 宮川一夫
音楽 伊福部昭
配役
無明の太郎 勝新太郎
楓 高峰秀子
愛染 新珠三千代
高野の上人 佐藤慶
鬼の棲む館 1969 大映京都