「博士の奇妙な愛情」「未知への飛行」に続くコロンビア映画の冷戦スリラー映画。スタンリー・キューブリック監督の製作者を勤めていたジェームズ・B・ハリスが監督を勤め、マーク・ラスコビッチの原作を「野のユリ」のジェームズ・ボーが脚色している。主演は艦長役のリチャード・ウィドマークと新聞記者役のシドニー・ポワチエ。製作は監督ジェームズ・B・ハリスと主演リチャード・ウィドマークが共同で勤める。
あらすじ
駆逐艦ベッドフォードはグリーンランド沖でソ連の潜水艦が潜行しているのを発見する。その潜水時間は最高で24時間だ。艦長フィンランダー大佐はキューバ危機の際、海上に張り付き、ソ連原潜が息切れして浮上させ恥をかかせた経験があり、今回も潜水艦の浮上時を狙っていた。この艦には黒人新聞記者のマンスフォードが乗船していて、記事を書いている。マンスフォードは艦の規律の乱れが一切ないことを不安視した。彼らは歴戦の雄フィンランダーに心酔して疑わず、潜水艦を追い始めてから臨戦態勢を緩めず、一切休みを取っていなかった。ついに24時間が経ちフィンランダーはソ連潜に対して警告を発した。
そのとき眼前にソ連潜がシュノーケルを出して浮上する。それをフィンランダーはベッドフォード号で踏みつけて行き、潜水艦は再び海底に姿を消す。フィンランダーは「ソ連側が攻撃して来たら、こちらも攻撃する」と息巻くが、新人砲撃手のラルストン(J・マッカサー)が緊張のあまり、発射命令と間違えて爆雷を発射してしまう。見事に潜水艦も命中したが、爆破する直前に敵も核魚雷をベッドフォードに向けて発射していた。
雑感
キューバ危機のエピソードは実話である。駆逐艦と潜水艦の対決と言えば「眼下の敵」(主演ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス)があるが、第二次世界大戦の話でありたまたまUボートは浮上していたので、乗組員の犠牲は最小限で済んだ。
しかし現代の駆逐艦と潜水艦の戦いとなると、そうは行かない。どちらかが手を出せば共倒れしかない。核魚雷を使ったら第三次世界大戦になる。
しかもそれが、ちょっとしたミスから生ずるのだ。8時間労働制は守らなければいけない。
アドバイザー将校として同船していたNATO将校役は、「眼下の敵」つながりでクルト・ユルゲンスにして欲しかった。その代わり、軍医役のマーチン・バルサムは予算的に余計だった。
「ハワイ5-0」で活躍したテレビ俳優のジェームズ・マッカーサーは、この時期は「バルジ大作戦」など映画界でも活躍したが、内面を表現しなければいけない新人将校ラルストンの役は荷が重かった。端役で出ていたドナルド・サザランドならこなしていただろう。
スタッフ・キャスト
監督 ジェームズ・B・ハリス
製作 ジェームズ・B・ハリス、リチャ-ド・ウィドマーク
原作 マーク・ラスコビッチ
脚本 ジェームズ・ポー
撮影 ギル・テイラー
配役
エリック・フィンドラー大佐(艦長) リチャード・ウィドマーク
新聞記者マンスフォールド シドニー・ポワチエ
新人将校ラルストン ジェームズ・マッカーサー
シュプレッケ准将 エリック・ポートマン
ポッター軍医 マーティン・バルサム
ソナー係クェフル ウォリー・コックス
アリソン副官 マイク・カネ
医局員 ドナルド・サザランド