(◎★)フランス映画。
作曲家の夫を亡くし、虚無に陥った未亡人が様々な人々との出会いを通して、生きる気持ちを取り戻し、夫のやり残したEU統合記念楽曲を完成させるまでを描いている。
フランス国旗を構成する三つの色をモチーフにキェシロフスキが監督した「トリコロール」三部作の一作目。
クシシュトフ・ピェシェヴィチの脚本をクシシュトフ・キェシロフスキが監督した。
音楽ズビグニエフ・プレイスネル、撮影スワヴォミール・イジャックともにポーランド時代からのキェシロフスキ-組である。
主演は、ジュリエット・ビノシュ。共演はブノワ・レジャン、エレーヌ・ヴァンサン、シャルロット・ヴェリ。
雑感
監督のクシシュトフ・キェシロフスキは、ポーランド出身で、70年代から短編ドキュメンタリーを手がけていた。「ベルリンの壁崩壊」以前から「アマチュア」、「殺人に関する短いフィルム」などで有名だが、90年代に入ってフランスに移り傑作映画「ふたりのヴェロニカ」を撮った後、このトリコロール三部作に取り組んだ。
トリコロールの色には意味はないとされる。
ポーランド人にとって、ソビエト・ロシアが崩壊して、強い西側に参加することは悲願だった。
そう考えると「青の愛」の青は、ヨーロッパ連合のカラーでもあり平和の象徴だ。
絶望に堕ちたジュリー役ジュリエット・ビノシュが再び人間らしく立ち直っていく姿は非常に美しく感じられた。
ただし、声楽曲を見事に使った「ふたりのヴェロニカ」があまりに素晴らしかっただけに、再び「青の愛」で声楽曲を使った点は、少しくどく感じた。
国内配給は、KUZUIエンタープライズが行った。
キャスト
ジュリエット・ビノシュ ジュリー
ブノワ・レジャン 夫の同僚オリヴァー
エレーヌ・ヴァンサン ジャーナリスト
フロランス・ペルネル 法律家サンドリーヌ
シャルロット・ヴェリ 娼婦ルシール
エマニュエル・リヴァ ジュリーの母
ユーグ・ケステル 亡夫パトリス
スタッフ
監督、脚本 クシシュトフ・キェシロフスキ
製作 マラン・カルミッツ
製作総指揮 イヴォン・クレン
脚本 クシシュトフ・ピェシェヴィチ
撮影 スワヴォミール・イジャック
音楽 ズビグニエフ・プレイスネル
ストーリー
ジュリーは、自動車事故で自ら重傷を負い、夫パトリスと娘を失う。夫は欧州連合記念祭典のために声楽協奏曲の作曲を委嘱されていた。
世の中に絶望したジュリーは回復後、夫の未完の協奏曲のスコアを捨て、田舎の屋敷を引き払いパリで孤独な生活を送ることにする。ジュリーは、彼女に思いを寄せる夫のアシスタントだったオリヴィエを呼び出し、思い出セックスをするが翌朝には姿を消した。
彼女は、住んでいた部屋にあった青いモビール(天井から下げた動く飾り)だけを手許に残した。パリでのジュリーは脳裏にあのメロディーが流れだし、不安に陥る・・・。
しかし、階下に住む娼婦ルシールと知り合い、ジュリーは少しずつ社交性を取り戻す。彼女の出演するストリップ小屋のテレビで、処分したはずの楽譜をオリヴィエが公開するのを見つける。さらに夫が愛人サンドリーヌと写っている写真が公にされた。裁判所へ愛人に会いに行くと、サンドリーヌは夫の男の子を妊娠していた。
ジュリーは、オリヴィエに夫のメモを元に曲の手直しを指示した。さらに夫の愛人で彼の子を妊娠しているサンドリーヌに屋敷をゆずる。そして、ジュリーは協奏曲を完成させる。オリヴィエは、ジュリーがパトリスにインスピレーションを与えていたことに気付いていたので、この作品をジュリーの作品として発表すべきと進言する。ジュリーは、一瞬考えたあと、それを承知した。恐らく、オリヴィエは彼女に対する愛を成就するだろう。