脚本家チームとして有名だったフランク・ローンダーと、シドニー・ギリアットのコンビが1945年映画制作会社インディヴィデュアル・ピクチャーズを設立して、1946年にギリアットが監督した英国ミステリ映画。
クリスチアナ・ブランドが原作した探偵小説の傑作に基づいて、ギリアットがクロード・グァーニーと協力して脚本化している。
主演はレオ・ゲン、「逢引き」に次ぐ出演作品であるトレヴァー・ハワード。探偵役はアラステア・シム。他にサリー・グレイ、新人ロサムンド・ジョン、ジュディ・キャンベル。
あらすじ
第二次世界大戦の最中、病院はどこもドイツ空軍のV-1の負傷者で混雑していた。空襲を受けて骨を折った郵便配達夫ヒギンズが外科手術が行われることになった。手術のスタッフは、イーデン執刀医、バーンズ麻酔医、ベイツ看護婦長、サンソン看護婦、フレディ看護婦、ウッズ看護婦。手術前の麻酔中にヒギンズは急死する。その問題は事務長が省庁に報告する事態となった。
その夜、企画されていた職員のレクリエーション(フォークダンス)は予定通り行われた。バーンズは婚約中のフレディに声を掛けるが、イーデンに夢中で相手をしてくれない。サンソンは母を空襲で失って間がないこともあり、神経症を患っている。ベイツはかつてイーデンと付き合っていたが、いまだに未練を持っていた。レコードを止めて、ベイツ看護婦長が「私は殺人犯を知っている、証拠はある場所に隠してある」と言い、手術室の鍵を持って消えた。
遅くなってサンソンが手術室を覗くと、ベイツが死んでいた。二箇所を刺されていたが、致命傷は一撃目だった。
翌日ロンドンからスコットランド・ヤードのコックリル警部が訪れた。警察はヒギンズの事件も殺人と見ていた。早速コックリルは関係者に聞き込みを掛け、ヒギンズの手術に参加していた2人の医師と4人の看護婦のうちベイツを除いた3人を重要参考人として尋問する。この五名はベイツが殺される前後三十分間、みなアリバイがなかった。
前夜夜勤だったリンレイが翌日に宿舎の二階で眠っていると、何者かがガスの栓を開いた。サンソン看護婦が発見するが、リンリイを抱いて階下へ降りようとした。しかしサンソンはガス中毒のため階段で気を失いリンリイは後頭部を強打した。
実はリンレイの回復は早かったが、コックリルは、彼女が頭部骨折していると見せかけて、脳外科手術することとした。四名の容疑者に立会わせて、ヒギンス事件の犯行現場を再現しようとしたのだ。但し、イーデンは整形外科医なので、パーディ医師が執刀、イーデンは助手となる。院長、警察が立ち会って、リンレイの手術が行われた。問題の麻酔が始まるとリンレイもヒギンスと同様な容態に陥る。コックリルは酸素を新しいものと交換し、リンレイの無事をスタッフに知らせた。そして犯人をサンソンと指名した。彼女はヒギンズが防空当番だったのに、母を助けなかったと逆恨みしていたのだ。
雑感
戦時中に撮影された映画。
英国の有名推理小説家であったクリスチアナ・ブランド初期の医学ミステリー「緑は危険」(英題は映画と同じ)の映画化であり、映画評論家の中でミステリ小説の映画化の中でも最高峰として有名な作品。
アメリカとイギリスでは全くミステリーの意味が違っていて、イギリスはコナン・ドイルやアガサ・クリスティなどの犯人当てパズルであり、アメリカでは強い奴が腕っ節にものを言わせて証拠を集めるハードボイルドを指している。
この映画は途中までにすべての手がかりを画面に出しておいて、「犯人は誰か」という観客への挑戦をしている。
一回見て「ああそうなのか」ではなく、二回見てどこに証拠が隠されていたのかを探すのもこういう映画の見方である。
スタッフ
製作 フランク・ローンダー 、 シドニー・ギリアット
監督 シドニー・ギリアット
脚本 シドニー・ギリアット 、 クロード・グァーニー
原作 クリスチアナ・ブランド
撮影 ウィルキー・クーパー
演奏 ロンドン・シンフォニー・オーケストラ
キャスト
コックリル警部(語り手) アラステア・シム
イーデン整形外科医 レオ・ゲン
パーディ脳外科医 ヘンリー・エドワーズ
バーンズ麻酔医 トレヴァー・ハワード
ホワイト医師 ロナルド・アダム
ベイツ看護婦長(イーデンの元愛人) ジュディ・キャンベル
カーター看護婦長 ウェンディ・トンプソン
エスター・サンソン看護婦 ロサムンド・ジョン
フレディ・リンレイ看護婦(バーンズの婚約者) サリー・グレイ
ジェーン・ウッズ看護婦 メグス・ジェンキンズ
ヘンドリクス刑事 ジョージ・ウッドブリッジ
第一の被害者ヒギンズ ムーア・マリオット