田中絹代が子連れの銀座ホステスに扮し、母の喜びや女の哀しみを描いた作品。とくに戦後暫くしてからの銀座界隈の様子がよく分かる。
成瀬巳喜男監督が子役を使うが、どうも松竹の小津安二郎や清水宏には及ばなかった。
あらすじ
雪子は旦那に捨てられ子連れのやもめ暮らしのため、戦後も銀座に働きに出ている。もうホステス仲間の中では古株で言わば中間管理職で、如才無い人だが、情にほだされるところもある。映画前半は彼女と息子春雄の日常を淡々と描く。後半に入り友人静江に頼まれて、雪子が疎開先でお世話になった京助を東京観光に連れて行く辺りから空気が変わる。詩を嗜み星空を見上げる彼に、乙女チックだった頃を思い出してすっかり若返ってしまう。そして子連れの再婚について尋ねると、愛があればいいじゃないですかといわれ、その気になり始める。
そのとき、妹分の京子が飛んできて、春雄がいなくなったという。京助のことは京子に任せて、心当たりを探し回るが、見当たらない。春雄は夜遅くになって帰ってきた。雪子は怒って泣いた。春雄も泣いた。
翌日京助の旅館に行くと静江がいて、京助は急用で帰ったそうだが若い女が見送ったのよと憤慨している。雪子は京子を問い詰めると、気があったので婚約したと言う。これには呆れ果ててしまう。
雑感
前半は小津監督のように日常感を前面に押し出し、後半に少しだけドラマの盛り上がりを付ける。落ちはかなり以前から分かってしまって、意外性は全くない。成瀬監督としては、地味な小品だろう。
しかし田中絹代の出演作品としてみたときは、非常に魅力的だ。先が見えているからこそ、彼女の些細な心情の変化が手に取るようにわかる素晴らしい作品だ。
スタッフ・キャスト
監督 成瀬巳喜男
脚本 岸松雄
配役
雪子 田中絹代
京子 香川京子
静江 花井蘭子
京助 堀雄二
清吉 柳永二郎
佐久 清川玉江
銀座化粧 1951 新東宝 成瀬巳喜男監督 田中絹代主演