スローン・ウィルソンの同名小説を映画化した、懐かしい青春映画。
脚色・製作・監督の一人三役を「縛り首の木」のデルマー・デイヴィスが受け持っている。
主演は、ドロシー・マクガイヤ、リチャード・イーガン、サンドラ・ディー、トロイ・ドナヒュー。
共演はアーサー・ケネディ、コンスタンス・フォード、ビュラ・ボンディ。
あらすじ
零落したバート・ハンターは、メイン州のパイン・アイランドで妻のシルビアや息子のジョニーと一緒に豪華な邸宅をホテルに改造して生計を立てていた。昔バートの父に雇われていたが、本土に行って事業に成功し億万長者となったケン・ヨルゲンソンが、妻のヘレンと美しい娘モリーと一緒に訪れる。ケンとモリーは若い頃、関係を持っていたが、生活のためモリーはバートとの結婚を選択した過去があった。
ジョニーとモリーは、すぐ愛し合うようになった。夜回りのトッドからこれを聞いたヘレンは娘を叱る。一方、ヘレンと寝室を別にする生活に嫌気が差していたケンと、夫がアル中で使い物にならなくなっていたシルビアは、W不倫に走った。2人は互いに離婚を望んだが、子供は失いたくなかった。2人の間を怪しんだヘレンは、トッドを介して動かぬ証拠を握った。
しかしジョニーとモリーの乗ったボートが転覆し、二人は一晩寄り添って眠り、翌朝救助隊に救出される。ヘレンは、医者に娘がセックスしていないか調べさせ、バートに夫とシルビアの情事を暴露した。バートもこの事実を知っていた。新聞は、この醜聞を書き立てた・・・。
雑感
かなり、辛口の家庭映画であり青春映画でもある。
サンドラ・ディーとトロイ・ドナヒューがカップルになる青春恋愛譚と思って見ていると、意外にセックスレス組のドロシー・マクガイヤとリチャード・イーガンも同じぐらいフィーチャーされて、回春映画の側面もある。
「避暑地の出来事」(A Summer Place)という題名を聞いて、山口百恵の「ひと夏の経験」をまずイメージしたが、少し違っている。避暑地であるパイン・アイランドという場所が重要な意味を持っている。
夏休みが終わって、ジョニーとモリーは遠く離れた学校に送られるが、結局二人ともパイン・アイランドに戻ってくることになる。彼らは、ここを生活の根拠とするのだ。
ニュー・イングランドは、ホーソーンの小説「緋文字」さながらの厳しい戒律を持ったプロテスタントの子孫が多く住む町だ。
その中で、愛情が冷めきったからと言って親の世代が自由に別れて再婚し、子供世代が堕胎を許されず結婚しなければならないと言うのは、不公平を感じる。モリーの方が、刺激がなく老人の多い村に飽きて、シルビアと同様に客と浮気をしそうだ。ジョニーくんは、アル中にならず健康を守らないといけない。
実際は、アイドル人気が落ち着いて結婚したトロイ・ドナヒューは、人気が急降下した。元々、演技には向いてなかった。その後、麻薬に手を出して廃人同様になるが、見事に更生して反麻薬運動に参加していた。そして65歳の時、心臓発作で亡くなった。2001年9月2日のことである。その11日後に、ドロシー・マクガイヤも心不全で亡くなっている。
サンドラ・ディーは、映画「悲しみは空の彼方へ」で子役アイドル女優となり、「避暑地の出来事」で決定的人気となった。日本で言えば、彼女の魅力は「隣のミヨちゃん」タイプだろう。しばらくしてボビー・ダーリンとセレブ婚をして一子を儲けるが数年後には別れて、いつの間にかサンドラは表舞台から消えていった。2005年没。
マックス・スタイナーが描いた主題曲は、のちにパーシー・フェイス楽団が「夏の日の恋」としてカバーして、インスト曲でありながら九週連続全米一位を続けるほど、大ヒットした。
スタッフ
監督、製作、脚本 デルマー・デイヴィス
原作 スローン・ウィルソン
撮影 ハリー・ストラドリング
音楽 マックス・スタイナー
キャスト
ケン・ヨルゲンセン リチャード・イーガン
シルビア・ハンター夫人 ドロシー・マクガイア
モリー・ヨルゲンセン サンドラ・ディー
バート・ハンター アーサー・ケネディ
ジョニー・ハンター トロイ・ドナヒュー
ヘレン・ヨルゲンセン夫人 コンスタンス・フォード
ハンブル老婦人 ビューラ・ボンディ
クロード・アンドリュース ジャック・リチャードソン
***
夏休み明けになって、モリーとジョニーは遠く離れることになった。二組の夫婦の離婚裁判は無事終わって、離婚が成立した。
しかし2人がバッファローで会ったことがヘレンにバレてしまう。二人は激しい口論を交わした。
ケンは娘に、再婚したシルビアやジョニーと共に次の休暇を過ごしてほしいに頼んだ。モリーとジョニーを加えて、ロングアイランドのヨルゲンセン一家は、新しい生活を始めた。
数カ月後、モリーの妊娠が分かった。モリーが若すぎるので、親の同意が必要だ。ヘレンは許すわけがない。そこで、ジョニーはパインアイランドに渡り、バートに結婚の許可をもらいに行く。ジョニーの前に軍服姿のバートが現れた。アル中が酷くなって、海軍病院に入るという。病状は深刻で、二度と病院から出られることはないだろう。バートは、最後までケンの娘と一緒になることをジョニーを許さなかった。
二人は、最後の希望を託してケンとシルビアに合いに行った。ジョニーはケンに殴られることを覚悟していた。でも二人は、快く結婚を認めてくれた。二人はパイン・アイランドに戻って、新しい生活を送ることになった。