透明人間と蝿男を戦わせようという怪人対決もの。
ハリウッドのSF映画「蝿男の恐怖」より一年早く、「縮みゆく男」と同じ年に上映された。

大映は怪獣映画への進出は遅かったが、怪人映画への進出は東宝より早かった。
これも怪人映画の一つだが、どうせ「フランケンシュタインと狼男」に刺激を受けて対決ものを企画したのだろう。
蝿男というタイトルは、実際は薬物を使い人間が小型化して空を飛ぶようになり、飛行中に蝿の飛ぶような音を出すことから、そう名付けられている。

高岩肇まったく科学考証を考慮していないオリジナル脚本村山三男が監督した。特殊効果は的場徹の仕事だ。
主演は北原義郎品川隆二でヒロインはデビュー間もない叶順子珍しく伊沢一郎中条静夫が悪役でタッグを組んでいる。

 

Synopsis:

衆人環視のもと、姿さえ見えない犯人による連続殺人事件や盗難事件が起きる。手がかりは蠅のような羽音だけだ。若林捜査一課長の手に負える事件ではなかった。

そのころ若林の友人で宇宙線物理学者の月岡は、早川博士の指導で研究する最中に、照射すると透明になってしまう光線を発見する。しかし動物に照射した場合、元に還元することはまだできない。助手の杉本は連続殺人事件捜査のため、自ら実験台となるが、顔に包帯を巻き、手袋をしていたため、顔と手だけは透明にならなかった。

被害者の繋がりから若林は楠木という経営者と山田というバーテンを参考人としてマークするが、決め手がない。警察をあざ笑うかのように殺人鬼は踊子の美恵子と部下の葉山刑事を毒牙に掛ける。ここに至って警視庁は透明光線を採用することを決定する。

それに対して殺人鬼は透明化装置を奪おうとして早川博士と杉本助手を殺害したが装置は盗めなかった。月岡は決心して(なぜか洋服のまま)透明光線を当てて、透明人間になり若林に協力する。また若林はブーンという羽音が必ず聞かれることから殺人鬼は換気扇の隙間から室内に侵入した蠅男ではないかと推理する。そして再度実験室に侵入した蝿男である山田を月岡は罠に掛けて酸に溶かして倒す。

ここに至って楠木が旧日本軍秘密兵器のアンプルを南方から持ち帰って山田を殺人鬼に仕立てたことがハッキリする。自ら蝿男となった楠木は若林や透明人間である月岡に挑戦状を叩きつける。透明光線の装置を渡さないと東京中でテロを起こすと予告したのだ。まず有楽町で満員電車が爆破されて数百人が死んだ。

楠木は次の時限爆弾をセットした場所を教える代わりに透明光線装置を渡せと脅迫する。
そして引き渡しの場所を丸の内のビルに指定した。若林と月岡は待機していたが、楠木がヘリでやって来て装置を持ち去るのを指をくわえて見るしかない。楠木は脱出間際に時限爆弾をセットしてなかったことを暴露して悠々とヘリで逃げ去る。万事休すと思われた時、ヘリがもどってきた。博士の娘章子が透明になぅてヘリに乗り込み銃を楠木に突きつけたのだった。

 

Impression:

最後に北原義郎が透明になるのかと思っていたら、叶順子が透明になってしまった。

この作品の見所は、中条静夫の若くてヤサグレた悪役ぶりだ。大映ドラマだと、真面目な仕事人か部下を虐める上司の役が多かったから、こういうジャンキーなヤクザの役を珍しく見た。

予算がないB級映画だから仕方はないが、できれば特撮で単なる合成だけでなく、いろいろ工夫して欲しかった。アメリカのユニバーサル映画「縮みゆく男」では、小人から見た視点で周囲を描いていた。大映との差はあまりに大きい。

 

Staff/Cast:

監督 村山三男
製作 永田秀雅
脚本 高岩肇
企画 山野利一
撮影 村井博
特殊技術 的場徹
音楽 大久保徳二郎
美術 後藤岱二郎

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出演
品川隆二 月岡博士
叶順子 早川章子
鶴見丈二 杉本
南部章三 早川博士
北原義郎 若林捜査一課長
見明凡太朗 警視総監
浜口喜博 葉山刑事
伊沢一郎 楠木
中条静夫 山田
毛利郁子 美恵子

透明人間と蝿男 1957 大映東京 —復讐に燃える蝿男が東京都民を無差別攻撃する!

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