笠智衆が例によって妻に先立たれた、お人好しでたたき上げの父親を演じている。松竹には珍しい派手な美人・杉田弘子が長女、田浦正巳がたよりなげな長男、色男の清川新吾が次男役だ。
共演は係長笠智衆を追い抜いて課長に出世する杉田の恋人に、(のちに交通事故でなくなる)高橋貞二、怪しい発明家役に三井弘次、田浦正巳の恋人に小山明子、社長の愛人に幾野道子、清川新吾が恋をする令嬢に桑野みゆき。
監督* 穂積利昌
脚本* 斎藤良輔 * 芦沢俊郎
音楽* 万城目正
「父は鼻血を出すので会社をクビにしてくれ」と、子供たちが揃って社長に談判したのには笑った。
笠智衆にコミカルな演技は似合わない。周りがコミカルにすればいいのだ。受けに入ったときに笠智衆は最強のコメディアンになる。それなのに多くの演出家が彼に笑いを取らせようとして失敗する。
松竹も姑息なことをしている。出てくる女の子は誰も美人だ。しかしブスも出さないと笑いが取れない。そこで美人に眼鏡を掛けさせて無理矢理不美人にしている。
三井弘次は今回は奇抜な服装で、東宝で言えば三木のり平の役回りだ。ちょっと無理があったかな。酔っぱらわせたら右に出る人はいないのだが、今回は酒を飲むシーンもなかった。
松竹家庭劇だが初期テレビドラマの味わいがあった。
逃げだした縁談 1957 松竹