1929年に公開されてトーキー映画初のアカデミー作品賞を受賞した「ブロードウェイ・メロディ」に続けと1935年に製作されて翌年公開されたミュージカル映画。この後、1937年製作の第三弾、1940年製作の第四弾に続いていく。
監督はロイ・デル・ルース。主演は映画初主演エレノア・パウエルとMGMの若きスターだったロバート・テイラー。
共演はジャック・ベティ、ユナ・マーケルら。
あらすじ
プロデューサーのゴードンはスポンサーになったリリアンに、二週間以内に主演女優が見つからなければリリアンを主演に起用すると約束してしまう。そこへ高校卒業以来GFのアイリーンがスターを夢見て現れる。ゴードンは彼女のような女性がブロードウェイにいるべきではないと、故郷に帰らせる。だがアレットという渡米した人気フランス人歌手が新聞記者キーラーがゴードンを担ぐためのでっち上げと知った秘書キティは、アイリーンをアレットに扮装させて主演にしようと考えた。ゴードンはアレットに会ってもそれがアイリーンと気付かず、偽のアレットが見事主演に抜擢された。
ところが本物のフランス人歌手アレットが新聞社に抗議を入れてきた。キーラーは偽のアレットであるアイリーンにその手紙を見せ諦めさせようとするが、アイリーンはキーラーまでも仲間に引き入れる。
明日を舞台初日に控え、ゴードンはアレットのお披露目パーティーを開く。ところがアレットが突然帰国したと新聞記事で知る。彼が呆然としているところにアイリーンが宿敵キーラーと一緒に現れる。そして前夜祭のショーが始まると、アレットが踊るところでアイリーンが出て来てダンスを披露する。それがアレットそのものだったので、ゴードンもやっと気が付く。これで明日からの「ブロードウェイ・リズム」の舞台もアイリーン主演で安心だ。キーラーは新聞社に記事の差し替えを依頼する。「ゴードンの舞台にアイリーン・フォスターを主演起用、その抜擢の裏にキーラーの存在があり?!」
主要な楽曲
「Broadway melody」:ハリー・ストックウェル
「You are my lucky star」:フランシス・ラングザム
「I’ve got a feelin’ you’re foolin’」 :ジューン・ナイト、ロバート・テイラー
「Sing before breakfast」:イブセン兄妹、エレノア・パウエル
「You are my lucky star」:エレノア・パウエル(吹替マージョリー・レイン)
「On Sunday afternoon」:イブセン兄妹
「I got rhythm〜solo dance」:エレノア・パウエルのソロ・ダンス
「Broadway rhythm」:フランシス・ラングザム、イブセム兄妹、ジューン・ナイト、ニック・ロング・ジュニア、エレノア・パウエル
雑感
映画の筋書きはベタだが、それでもMGM製作だけにRKOのフレッド&ジンジャー・シリーズほどには脚本は貧しくない。
例えばジャック・ベニーとともに「いびき男」(ロバート・ワイルドバックのネタ)を何度も登場させたが、その甲斐あってラスト・シーンはしつこすぎて笑ってしまった。
またロバート・テイラーがジャック・ベニー、シド・シルヴァースを何度も殴りに行くシーンも楽しい。何回も繰り返すうちに面白くなる好例だ。
ブロードウェイの現役スターであるエレノア・パウエルのマシンガン・タップに驚いた人も数知れず、この作品は人々の思い出の映画となった。
おかげで「ブロードウェイ・メロディ」第一弾は忘れ去られた。シリーズ第一弾の評判は今日あまり芳しくない。誕生まもなかったトーキー映画の可能性を見せたとは言え、ブロードウェイの第一線で歌い踊っていた歌手やダンサーが出たわけでないからだ。
1930年代のミュージカル映画は、RKOがフレッド&ジンジャー・シリーズを展開し、また振付師バスビー・バークレーは大胆なカメラ・アングルで大衆の度肝を抜き大いに沸かせた。
それに対してMGMは1935年にブロードウェイからエレノア・パウエルをハリウッドに招聘し「ブロードウェイ・メロディ」シリーズの第二弾以降を製作し大成功する。
この映画はクレジット順がジャック・ベニーがトップ左に立っているが、年功序列だから仕方がない。実質的にブロードウェイからハリウッドに移ったばかりのエレノア・パウエルが女性タップダンサーとして一番目立っている。次が二枚目のロバート・テイラーと、気の利く秘書役ユマ・マーケル。コメディ・リリーフのジャック・ベニー、シド・シルヴァースのコンビは四番手ぐらい。
ただしエレノア・パウエルは女性ダンサーで敵がなかったが、男性タップダンサーと組まなかったので、デュオダンスが見られなかった点で非常に物足りない。女性がリードするデュオダンスを作ってくれたら、ダンスもさらに広まっただろう。
それから将来のことを考えて、フレッド・アステアのように歌を磨くべきだった。この作品でエレノアの歌声はマージョリー・レインの吹替だ。
ロバート・テイラーはジューン・ナイトとデュエットしているが、歌は下手だった。
ロイ・デル・ルース監督はワーナー所属だったため、撮影期間が伸びてしまいルース監督が契約切れになった後はベテランのW.S.ヴァン・ダイク監督(「影なき男」)がリテイクを演出している。
スタッフ
監督 ロイ・デル・ルース、W.S.ヴァン・ダイク(クレジットなし)
製作 ジョン・W・コンシダイン・ジュニア
原作 モス・ハート
脚色 ジャック・マッゴワン 、 シド・シルヴァース
撮影 チャールズ・ロシャー
音楽 ナシオ・ハーブ・ブラウン
作詞 アーサー・フリード
振り付け デーヴ・グールド (アカデミー・ダンス振付賞受賞)
“バレエ”と”Lucky Star”の振り付け アルバーティナ・ラッシュ
キャスト
新聞記者バート・キーラー ジャック・ベニー
アイリーン・フォスター エレノア・パウエル
プロデューサーのボブ・ゴードン ロバート・テイラー
秘書キティ・コーベット ユナ・マーケル
キーラーの助手スヌープ シド・シルヴァース
富豪リリアン・ブレント ジューン・ナイト
兄テッド バディー・エブセン(「ティファニーで朝食を」の夫役)
妹サリー ヴィルマ・エブセン
演出家ベイジル ニック・ロング・ジュニア
いびき屋 ロバート・ワイルドハック
編集長 ポール・ハーヴェイ
歌手フランシス・ラングフォード 本人
歌手ハリー・ストックウェル 本人