盲目の娘が連続殺人犯の証拠を握ったばかりに命をつけ狙われる心理スリラー。
ブライアン・クレメンスの脚本をリチャード・フライシャー監督が映画化。
主演は「ローズマリーの赤ちゃん」で知られるミア・ファーロウが盲目の娘を熱演。犯人は最後まで見ていないとわからない。
あらすじ
サラは両親を亡くした後、叔母さん夫妻と従妹サンディに愛されて幸せに暮らしていた。乗馬が得意だったが、落馬事故で失明して五週間も病院でリハビリをしていた。
サラは五週間ぶりに暮らしていた家に帰ってくる。邸内は何不自由なく歩くことができた。翌朝サラは厩務員をしている恋人スティーブと会う。彼はサラとの再会を喜び乗馬に誘った。彼女は事故以前のように馬を走らせることができた。スティーブと別れて家に戻ったが、家族の気配がなかったので、眠ってしまった。
翌朝早く、スティーブが馬を一頭プレゼントしてくれた。二人は午前中馬を走らせ、家に帰ってきた。
彼女は入浴のために、バスに手を入れた途端、叔父の死体が浸けられているのに気づく。部屋に戻るとサンディはベッドで殺されており、叔母も居間で殺されていた。入り口付近で庭師パーカーが撃たれていた。彼は犯人のブレスレットがある場所を告げて死ぬ。
そのとき、誰かが入ってきた。サラは隙をみて、馬に乗って逃げ出した。森の中で落馬する。盲目の彼女は傷だらけになるジプシーのキャンプにたどりついた。しかし彼らは、サラが持っているブレスレットを見ると彼女を小屋に閉じ込める。弟のものらしかったから、すぐ逃げ出そうと言うわけだ。
馬だけが戻ってきたのを不思議に思ったスティーブは、車に乗ってサラを探した。屋敷に着くと、死体が四人もあったので、サラは逃げ出したと考えて、周囲を探索する。ようやくセラを発見したスティーブは、部下のジャッコだけセラの護衛に残して仲間と銃を持ってキャンプに向った。ジプシーたちが持っていたブレスレットは弟のジャックのものではなく、仲間のジャッコのものだったのだ。
スティーブはすぐさま引き返した。ジャッコは今にもサラを浴槽の中で溺死させようとしていたが、スティーブがぶちのめした。ジャッコは車で泥を靴にかけられたのを恨みに思い、家族を次々に殺したのだ。
雑感
リチャード・フライシャーがイギリスへ渡り、サスペンス物を二本取ったうちの一本。(もう一つは「10番街の殺人」)
オードリー・ヘップバーン主演映画「暗くなるまで待て」のように盲人が殺人犯に追われる映画は多い。撮影監督ジェリー・フィッシャーがカメラワークを工夫し殺人犯の脚しか写さず顔を映さないようにして、誰なのかと言う緊張感を最後まで保たせた。
またミア・ファロウが家族が消えた後一晩寝てから、叔父が殺されたまま湯船に浸かっている風呂場に入っていくシーンでファロウの後ろ姿をカメラが固定で撮っていて、戸を閉めた後、死体に気付くところも撮影班は一工夫している。
ミア・ファロウの演技力も凄まじいものがある。彼女を知らない人は、彼女が盲目に違いないと思うだろう。
ただ、ファロウが演じるサラはどうしてニオイから違和感を感じなかったのか。目が見えなくなると、耳が敏感になると言うが、鼻や味覚、気配に関する感覚も鋭くなるのではないか?リハビリ期間が短かったのかな。
一晩中、血を流して死んでいるサンディの横で寝ていたのだ。最初に違和感を感じるべきでないか。浴室で犯人に触れてしまい、殺されかけるが、あそこも目が悪いだけなら、違和感を感ずるはずなのだ。
もしかしたらサラは馬の事故で視神経を傷付け失明しただけでなく、高次機能障害で脳の他の機能も麻痺し出しているのではないか。
英国のロマ事情について初めて知った。英国でも同化せず、キャンピング・トレイラーによる移動生活をしているようだ。驚いたのは母親がまるで英国人だったこと。ロマが英国女性と結婚して、妻が子供たちにまともな英語を教えて英国で生きていく術を取り入れているのだ。とはいえ、トレイラー生活での宿泊は皆に嫌がられていたから、やはり大変だろう。
コナン・ドイルの「まだらの紐」と言う短編小説でやはりロマ(ジプシー)が出てくるが、19世期末のロマはまだ呪いと踊り、麻薬のイメージだったが、100年経って随分文明化されたようだ。定住はしていないが。
スタッフ
監督 リチャード・フライシャー
製作 マーティン・ランソホフ 、 レスリー・リンダー
脚本 ブライアン・クレメンス
撮影 ゲリー・フィッシャー
音楽 エルマー・バーンスタイン
編集 セルマ・コネル
キャスト
盲目の娘サラ ミア・ファロー
ジョージ叔父 ロビン・ベイリー
ベティ叔母(母の妹) ドロシー・アリソン
従妹サンディ ダイアン・グレイスン
庭男バーカー ブライアン・ローリンソン
恋人スティーブ ノーマン・エシュリー
フォルスト クリストファー・マシュー
ジャッコ ポール・ニコラス