黒澤明監督が描く、シェークスピアの「マクベス」をもとにした戦国武将の悲劇。脚本は小国英雄、橋本忍、菊島隆三と黒澤明の合作。
主演は三船敏郎、山田五十鈴
共演は千秋実、志村喬。白黒スタンダード映像。

あらすじ

戦国時代のある国での話。
蜘蛛巣城では城主都築国春と軍師小田倉則保が、支城である北の館に配された藤巻の謀叛に頭を悩ませていた。そのとき、砦の武将である鷲津武時と三木義明が藤巻を討ったという知らせが飛び込む。

武時と義明は蜘蛛巣城に呼ばれたので、城へ向かう途中、蜘蛛手の森に入る。何度も通った道なのだが、見たことのない小屋ができており、中からモノノケの老婆が現れた。驚く二人にモノノケは「武時は北の館の主に、やがて蜘蛛巣城の城主になり、義明は一の砦の大将に、また義明の子はやがて蜘蛛巣城の城主になる」と言う。いつの間にか老婆も小屋も消えてしまった。

予言通り、国春は武時を北の館の主に、義明を一の砦の将に任ずる。武時の妻浅茅は、夫に国春を殺し城主になれと唆かす。武時は、国春が謀反対策で北の館に本陣を構えた夜に、国春を殺し、謀反の犯人として側近も殺して、蜘蛛巣城の城主となる。

義明は武時の謀反に対して無言を貫く。武時は、義明に対する褒美として、その子義照を世継ぎにするつもりだった。ところが浅茅が懐妊を告げたために、義明を登城途中に暗殺する。

ところが、浅茅は死産して発狂した。折悪しく、国春の息子国丸を奉じて軍師則保と義明の子義照が城に攻めてくると報告があった。武時は、モノノケに自分の武運を占わせた。モノノケは「蜘蛛手の森が動いて城へ押寄せぬ限り、そなたは敗れぬ」と予言した。

ところが、見張りの者は森が城に押寄せていると言う。武時は味方から見放され、矢を射られ首に刺さって絶命する。動く森と見えたのは、木の枝で擬装しながら城に近づいた軍師則保の部隊であった。

雑感

同時期の黒澤明監督作品としては、地味に見える。
BGMは能楽の謡であり、笛と太鼓だ。
しかし山田五十鈴が、武時(三船敏郎)を鼓舞して主君暗殺に手を貸すが、子供を流産してしまって気が触れる妻浅茅役を熱演。

この作品はシェークスピアの戯曲「マクベス」を元にしているが、時代設定を日本の戦国時代に変更している。
マクベス・・・鷲津武時(三船敏郎)
マクベス夫人・・・浅茅(山田五十鈴)
バンクォー・・・三木義明(千秋実
ダンカン王・・・都築国春(佐々木孝丸)
バンクォーの子フリーアンス・・・三木義照(久保明)
武将マクダフ・・・軍師小田倉則保(志村喬
マルカム王子・・・都築国丸(太刀川寛)

しかし「女の股から生まれたものには倒されない」という有名な魔女の予言はこの映画では省略されている。原作では武将マグダフがマクベスに対して「私は帝王切開で母の腹を破って産まれた」というオチがあったのだ。

スタッフ

製作、脚本、監督 黒澤明
製作 本木荘二郎
脚本 小国英雄、橋本忍、菊島隆三
撮影 中井朝一
音楽 佐藤勝

 

キャスト

鷲津武時 三船敏郎
鷲津浅茅 山田五十鈴
三木義明 千秋実
小田倉則保 志村喬
三木義照  久保明
物の怪  浪花千栄子
都築国春 佐々木孝丸
都築国丸 太刀川寛
産婆    三好栄子

 

蜘蛛巣城 1957 東宝製作・配給 黒澤明監督作品

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