ヴィヴィアン・リーが初主演のレックス・ハリソンと映画初共演する映画で、ブルーノ・フランク作の政治ラヴコメディをジェイムス・ブライディーが翻案したものからさらにイアン・ダルリンプルとドナルド・ブルが協力脚色し、ヴィクター・サヴィルがアイアン・ダルリムプルと共同監督し、ミュッツ・グリーンバウムが撮影したもの。共演はアースラ・ジーンズ及びセシル・パーカーを始め、サラ・オールグッド、エリオット・メイクハム、アーサー・ウォントナー等である。
あらすじ
イングランド人の記者バードンは、スコットランド西海岸ベイキー市で新聞社に入社し、ガウ市長の娘ヴィクトリアと恋に陥ちた。ガウ市長は政治に対しては独裁的な所のある男で、次期下院議会選挙に立候補する予定だ。新聞社社長は彼の右腕だ。さらにその妻はガウの愛人だった。
バードンは用事で市役所へ行った。ちょうどそこにアイスクリームの行商人であるヘガティー夫人が冷夏で商売不振となり税金滞納をしたため市役所に愛犬パッツィを連れて行かれたという。夫人はパッツィを返してと、市長に嘆願していた。しかし市長は取り合わない。それどころか犬を殺処分にすると言う。
バードンは義憤を感じ、ガウが市民生活など意識していないことを一面記事に載せた。ガウ市長を下院議員に推薦する大会はいっせいに市長を攻撃する大会となった。ガウは暴徒と化した市民の中を無言で逃げていった。
翌日は、ガウが所属する政党党首スカーリヴォア卿がこの地に来るので、娘はバードンに懐柔しようとする。彼は鼻の下を伸ばして了解するが、市長はヘガティー夫人の財産を差し押さえ、犬の殺処分を今日行うことにした。
怒ったバートンはパッツィを盗み出して、他紙の記者と大勢の犬を連れて、ガウ邸で行われるスカーリヴォア卿歓迎会に乗り込んだ。犬の大群はパーティーを台無しにして、党幹部たちは逃げてしまった。
バートンは市長から名誉毀損で告発され刑事裁判の被告となる。動物愛護協会がスポンサーになり、良い弁護士をつけるが、彼らは法廷技術で問題点を矮小化するつもりなので、彼らを解任する。そしてガウ市長と直接対決となった。二人の質疑応答はキリがなく、次の証人として娘ヴィクトリアを召喚したが、ヴィッキーは「妻は夫の為に不利な証言は出来ぬ。彼は私の夫です」と答えて法廷を混乱に陥れる。ここに至ってガウ市長は敗北を認め、二人の結婚を許し、犬パッツィはヘガティー夫人の許に帰された。
ある日、ガウが下院議員選挙の演説を行なっていた。ベイキーで力説していた御説とは全く違って、民主的なものだった。おそらく娘婿バードンが書いたものだろう。バートンはと言うと、ヴィッキーと新婚旅行を楽しんでいた。
雑感
戦争批判あるいは独裁批判ドラマだ。当然ファシスト批判をしている。
しかし若いレックス・ハリソンにがっかり。堅かった。舞台で頭角を現していたが、映画向けの演技を試みて失敗している。それと比べて、ヴィヴィアン・リーは流石に格上だった。
題名は「茶碗の中の嵐」のように些細な問題だから取るに足らないと思っていたが、それがいつの間にか、民衆運動として暴発することを言っている。
バードンは動物愛護家でなかったから、犬がどうなろうとよかったのだが、それによって身内がなく、貧しいヘガティー夫人が立ち直れなくなるのを心配していた。
それを動物愛護家とその弁護士は人よりも犬を重視して裁判をすすめる。それがバードンの気に入らなかったようだ。
最初は最初はなぜかイングランド人がスコットランドの新聞社に採用されるところからはじまる。スコットランドの新聞は市長派で市長のいいことしか書かない。ところが正義感の強いバードンは市長の市民に対する横柄な態度を見て、権力を握って勘違いしてると知り、市長と戦う記者となり、全国紙まで味方してくれる。
ここまで見てみると、イングランドのスコットランドに対する優越感を感じる。
スタッフ
製作 アレクサンダー・コルダ
監督 ヴィクター・サヴィル 、 イアン・ダルリンプル
原作戯曲 ブルーノ・フランク
脚色 イアン・ダルリンプル 、 ドナルド・ブル
撮影 ミュッツ・グリーンバウム
キャスト
ヴィクトリア ヴィヴィアン・リー
バードン レックス・ハリソン
リスベット アースラ・ジーンズ
市長 セシル・パーカー
ヘガティー夫人 サラ・オールグッド
ホレス ガス・マクノートン
マッケラー エドガー・ブルース
スケリヴォア卿 ロバート・ヘイル