伝記映画。19世紀後半にフランス・ピレネー山脈にある「ルルドの泉」で起きた奇蹟とそれに関わった一人の女性の半生を描いている。
ニューヨークで自殺したチェコスロヴァキアの亡命詩人フランツ・ウェルフェルの小説を原作として、脚本はジョージ・シートンが書き、監督はヘンリー・キングが当った。
白黒映画で、撮影はアーサー・ミラー。
主演は23歳の新鋭ジェニファー・ジョーンズ。
相手役も新鋭ウィリアム・アイス。共演はチャールズ・ビックフォード、ヴィンセント・プライス、リー・J・コッブ、グラディス・クーパー。
雑感
19世紀フランスでの実話に基づいた映画である。
少し頭の弱い娘ベルナデッタは、無垢に神を信仰した結果、洞窟に不思議な泉を見つけた。病気をも治してしまう聖なる泉の噂はフランス中を駆け巡り病める人々が集まり始める。そして、ナポレオン3世を動かすに至る。皇帝が認めた以上、ローマ法王庁も聖なる泉を公式に認定せざるを得なくなった。ベルナデッタは修道女となるが、他の修道女から嫉妬され35歳で死んでしまう。20世紀になり、ベルナデッタは、聖人に列せられる。
ヘンリー・キング監督は、ルルドの奇蹟をクールな眼であくまで客観的に描いている。
ベルナデッタと会った人が「どんな女優にもあの眼差しはできない」と言うほど、彼女の笑顔は素敵だったそうだ。
その表情を見事に再現したのが、新人のジェニファー・ジョーンズだった。彼女の表情は、私も始めて見るような気がする実に衝撃的なものだった。
他にも名優チャールス・ピックフォード、ヴィンセント・プライス、リー・J・コッブ、グラディス・クーパーが出演しているが、彼女の存在感の前に誰も全く手を抜いていない。
この作品は、1943年度アカデミー賞を最多部門で受賞している。まず主演女優賞を「カサブランカ」「誰がために鐘は鳴る」で主演したイングリッド・バーグマンを抑えて「聖処女」の新人女優ジェニファー・ジョーンズが受賞し、続いて白黒撮影賞をアーサー・ミラー、音楽賞をアルフレッド・ニューマンが受賞し、さらに白黒美術賞まで「聖処女」の美術チームが受賞した。
日本では1949年公開。
キャスト
ジェニファー・ジョーンズ ベルナデット・スビルー
ウィリアム・アイス アントワン・ニコロ
チャールス・ビックフォード ペラマール神父
ヴィンセント・プライス ヴィタル・ドゥトール検事
リー・J・コッブ ドズー医師
グラディス・クーパー マリー・テレーズ・ヴォーズー修道女
アン・リヴェア 母ルイーズ・スビルー
ローマン・ボーネン 父フランソワ・スビルー
リンダ・ダーネル 聖母マリア(クレジットなし)
スタッフ
製作 ウィリアム・パールバーグ
監督 ヘンリー・キング
原作 フランツ・ウェルフェル
脚本 ジョージ・シートン
撮影 アーサー・C・ミラー
音楽 アルフレッド・ニューマン
ストーリー
第2帝政期(ナポレオン3世の時代)のフランス。
ピレネー山脈の村ルルドに、スビルーという貧しい夫婦と五人の兄弟がいた。長女ベルナデットは身体が弱いが信仰心が篤かった。
ある木曜日、彼女は、洞窟の奥で偶然に光の仲で美しい白衣の婦人が立っておられるのを見た。それ以来、彼女はたびたび洞窟に行ってマリア様らしい婦人の姿を見た。その話は村に伝わり、多くの人がベルナドットに付いていくが、何も見えない。彼女だけが虚空を見上げてうっとりしている・・・。
ある日、泉に聖堂を建てよと貴婦人はベルナデットにおっしゃるので、ベルナデットは神父に相談する。信じていなかった神父は「2月に洞窟にあるバラを咲かせたらその話を信じよう」と答える。2月の最後の木曜日にベルナデットが洞窟に行くと、貴婦人は洞窟内のある場所を指さして掘りなさいと言う。ベルナデットが懸命に掘ると泉が湧いてきた。奇蹟の泉だと噂が立って、病人を泉につけてやると病気がすっかり治ってしまった。
泉の噂はフランス中に広まり、人々がルルドの泉に巡礼した。しかしこの奇蹟を官僚たちは信じようとしなかった。ベルナデットは、法王庁から魔女裁判にかけられるが、ペラマール神父が頑強に抵抗した。
次に地方検事は市長を動かして、洞窟に柵を張って出入りを禁じた。ところがナポレオン3世の皇太子が病にかかり、医薬が効かなず、乳母が泉の水を罰金を払ってでも汲みにくる。そのおかげで、皇太子は助かった。そこで、ナポレオン3世の許可が出て、自由な参詣は許されるようになった。
この事件は、ベルナデットの魔女裁判にも影響を与え、ついに無罪となる。ところがある日、スビルーの家をペラマール神父が訪れた。彼は、泉の奇蹟認定を守りたいのであれば、ベルナデットが結婚を諦め、修道院に行くべきことを告げた。彼女が修道院へ向かうとき彼女の許嫁アントアンが別れに来て、自分も一生涯結婚しないと誓った。
ベルナデットが修道院に入った後、教育係のヴォーズウは非常に厳しく当たった。修道女の間には、ベルナデットが一人だけマリア様に会ったことに対して妬む気持ちが強かった。ベルナデットは、修道院に入れられてますます孤独になった。
何年かして、ベルナデットは病を得て死の床に就いた。彼女の苦しみに耐える姿を見て、教育係ヴォーズウは自分の浅ましさを呪った。ペラマール神父がやって来て、最後のお祈りを捧げてもらい、ベルナデットは帰天した。