テッド・シャーマンの1940年代ラジオドラマ脚本を関沢新一が脚色し、本多猪四郎が監督した日米合作のSF海洋映画。特技監督は円谷英二。
主演は名優ジョセフ・コットン、宝田明。
共演はシーザー・ロメロ、岡田眞澄、リチャード・ジャッケル。カラー映画。
あらすじ
1969年春、物理学者田代健、海洋地質学者ジュール・マッソンと記者ペリー・ロートンの三名は、海洋観測船「富士」から潜水球に乗り込み海底探険に出かけた。途中で海底火山の爆発に遭って遭難する。そこを謎の潜水艦アルファー号に救助される。
アルファー号乗組員はマッケンジー艦長、女医のアン・バートンそして怪力の持ち主甲保(こうぼ)の三人だ。マッソンが重傷を負っているため、彼らの赤道上の海底基地「緯度0(Latitude 0)」に艦を帰港させる。
途中で悪の天才マリクと情婦ルクレチアが、アルファー号を攻撃してきたが、マッケンジー艦長は基地に逃げ込み電子バリアを張って難を逃れた。
「緯度0」は海底にありながら、陸地を人工太陽で温め空気を作り出して、まるで都市国家のようだった。既に電動自動車が一般に実用化されていた。さらに驚くべきことは、マッケンジー艦長が免疫を活性化させているため204歳だと言う。
かつての同級生だと言うマリクは、ブラット・ロック島に基地を持ち、仲間と潜水艦黒鮫号に乗り込み、隙あらば基地「緯度0」を破壊せんとしていた。
マリクは、ノーベル賞を受賞した岡田博士がマッケンジーの招待に応じて基地「緯度0」に移住するのを、ホノルルで待ち受けた。マリクは、博士が発見した「放射能に対する免疫」の秘密論文を欲した。岡田博士が拒絶すると、博士と娘鶴子を誘拐しブラット・ロック島に拉致監禁する。
そしてマリクが作り出したコウモリ人間で博士と鶴子を脅したが、彼らはマリクの要求を飲まない。ついに彼らの目の前で無理矢理に幹部「黒い蛾」の脳を、ライオンの体と鷲の翼を持った化け物グリホンの頭に移植する手術を行う。これによりアルファー号がブラッドロック島に近付けばグリホンに空から攻撃させるつもりだ。
これを知ったマッケンジーは、罠と知りながらブラッド・ロック島に出港した。何とか接岸したマッケンジーと甲保、田代、マッソン、ロートンの五名はバートン博士をアルファー号に残して上陸する・・・。
雑感
実は最近までアメリカの製作会社が倒産したせいで封印映画だった。
最後のエンディングは、狐につままれた気分になった。監督の考えでは、「緯度0」はパラレル・ワールドの分岐点だそうだ。
東宝SF映画には珍しいエンディングだが、原案がテッド・シャーマン原作で1940年代にラジオドラマ化した「Tales of Latitude 0」だったからだ。
この映画の企画自体はテッド・シャーマンが脚本を持ってドン・シャープを動かしたところから始まる。そこへ東宝重役藤本真澄が訪米したので、日本の高品質かつチープなSFXで済ませて低予算の合作映画を作ろうと言うことになったのだ。
終盤に人間と動物の脳移植のようにエグい描写がある。これはドン・シャープがイギリス出身のB級SF映画監督だったからだ。
怪物のキャラクター・デザインも円谷英二特技監督的ではない。ゴジラ的なキャラデザを嫌ったアメリカ側の要望だろう。
タイトルも「大怪獣・赤道の死闘」で良いと思うのだが、アメリカの都合だったのだろう。
実はマリクの基地が、仮面ライダーの敵ショッカーと同じ「鷲のマーク」をつけていたのだ。しかもマリクは、マッド・フィジシャンで何でも掛け合わせて改造人間を作るのが大好きときている。
この映画が公開されてから1年後に東映は、テレビドラマ「仮面ライダー」の構想を練り出した。コミカライズは石森章太郎である。人間を改造して動物とかけ合わせることや、ナチスのマークを真似したショッカーも、たまたま一致している。
さらに「緯度0大作戦」のジョセフ・コットンのアフレコと映画のナレーションを行ったのも、仮面ライダーでショッカーの声を演じた納谷吾郎である。
アフレコと言えば、外人が絡むシーンは台詞を英語で喋った。それから日本語でアフレコしたそうだ。
主演ジョセフ・コットンは、オーソン・ウェルズ映画とヒッチコック映画の常連だった。ジェニファー・ウォーンズと共演した「ジェニイの肖像」で1948年度ヴェネチア国際映画祭の男優賞を受賞している。
シーザー・ロメロはノワール映画の常連である。「テンプルちゃんの小公女」ラムダス役、「オーシャンと十一人の仲間」のデューク・サントス役や「怪鳥人間バットマン」の初代ジョーカー役など印象的な役どころを演じていた。
中山麻理は御年21歳、加山雄三主演「兄貴の恋人」で脇役ながら銀幕デビューして翌年「緯度0大作戦」に出演している。その後は「サインはV」の岡田可愛演ずる朝丘ユミのライバルキャラ橘麻理役(立木武蔵の親会社社長令嬢でエース格)としてブレークする。さらにチームから去り他球団に移籍した後、范文雀演ずる混血児ジュン・サンダースと朝丘ユミのX攻撃が話題になった。
同時上映は、「ニュージーランドの若大将」「巨人の星」。
スタッフ
製作 田中友幸、ドン・シャープ
原案・脚本 テッド・シャーマン
脚色 関沢新一
監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二
撮影 完倉泰一
音楽 伊福部昭
キャスト
クレイグ・マッケンジー艦長 ジョセフ・コットン(声:納谷悟朗)
田代健 宝田明
ジュール・マッソン博士 岡田眞澄
ペリー・ロートン記者 リチャード・ジャッケル(声:村越伊知郎)
甲保 大前均
アン・バートン博士 リンダ・ヘインズ(声:平井道子)
岡田博士 中村哲
岡田鶴子 中山麻理
姿博士 平田昭彦
悪漢マリク シーザー・ロメロ(声:富田耕生)
情婦ルクレチア パトリシア・メディナ
黒い蛾 黒木ひかる
陳 黒部進
***
マリクの作った巨大ネズミとコウモリ人間の大群が襲ってくるが、これらを退けたマッケンジーらはマリクの基地に侵入する。そこでマリクと揉み合いになり、マリクが突き立てたナイフはマッケンジーでなく誤って愛するルクレチアを刺し殺してしまう。その隙にマッケンジーは岡田博士父娘を救出し、アルファー号で出発した。
それに対してマリクは、黒鮫号に乗り込みアルファー号に対して超高電圧攻撃を行う。崖に仕込んだ磁場の中でアルファー号が身動きできないところを、レーザー砲で一挙に破壊しようと言う考えだ。しかしアルファー号は突然空に飛び上がり、逆に黒鮫号が崖の磁場に引き込まれる。そして怪獣グリホンの体に移植された「黒い蛾」が、恨みから黒鮫号を襲ってきた。黒鮫号は崩落する崖に飲み込まれた。
さて田代とマッソンはそれぞれ鶴子、バートンと愛し合い、「緯度0」に残ることにした。ロートンだけが地上へ帰還した。アポロ11号回収艦が救命ボートに乗った彼を助ける。彼は海底にパラダイスがあったと説明するが、狂人扱いされて病室に閉じ込められる。しかもその艦長や米軍将校たちが田代やマッケンジー、マリクにそっくりなのだ。ロートンは夢を見ていたのか?
マッケンジーにそっくりの将校は、アポロ落下地点の指令を受け、進路を「緯度0」に取る。