原作はベッツイ・ビートンで、ベン・バーズマンとアルフレッド・ルイス・レヴィットが共同脚色し、長編映画初挑戦の監督ジョセフ・ロージーが監督した反戦ファンタジー映画。撮影は「レベッカ」のジョージ・バーンズ。
主演は名子役だったディーン・ストックウェル。
共演はパット・オブライエン、ロバート・ライアン、バーバラ・ヘイル。
総天然色作品。
あらすじ
ある警察署に、坊主頭の家出少年が保護された。小児科医師エヴァンスが現れ少年の口は開かれ、信じられないような物語が語られた。
ピーター少年はロンドンに生まれたが、第二次世界大戦がロンドンを襲い、彼は両親に別れて疎開先で過ごしていた。そのうちに両親は戦災に会って被害を受け、彼はアメリカ人の芸人にともなわれて渡米する。
その芸人はおじいさんだが、ピーターを孫として可愛いがる。ピーターは町の人と親しくなり転校して女教師ブランドや級友たちと遊ぶうちに親元を離れた淋しさも忘れる。
だが戦災孤児救援のための衣服供出が行なわれた日、両親の死亡を知り自分が戦災孤児と判ってから、彼の頭は戦争の恐怖で一杯になる。
ある朝、一夜にして彼の頭髪は緑色に変わってしまう。おじいさんは驚き、医者まで魂消る。緑の髪に近付くと伝染するという噂がひろがり、クラスメイトからも仲間外れにされる。
孤独を託つピーターは森に迷いこむ。気付くと彼は戦災孤児救援ポスターで見た孤児たちに囲まれていた。彼等からは「緑の髪は戦災孤児の象徴だ。子供たちにとって戦争がどんなに非道いものかを世界中に訴えてくれ」と頼まれる。
戦争を止めさせる使命を持ったピーターは町に戻り、人々に緑髪の由来を説く。しかし級友たちは彼の髪を刈ろうと鋏を持って襲う。
やっとのことで自転車に乗って逃げ切ったピーターだが、家に戻るとおじいさんと医師がいて、緑髪のせいで売り上げが下がったと言う牛乳屋の抗議を聞いているところだった。医師は坊主にすると黒い髪が生えるかもしれないと言い、おじいさんは剃髪を勧める。
誰も自分の意見に賛成してくれないと諦めたピーターは、髪を刈ることに同意した。そして衆人監視の中で丸坊主にされたが、その夜家出した。
聞き終わった博士は黙ってピーターをおじいさんに引き渡すが、おじいさんはピーターの父の遺書を読み聞かせて、彼の信念が間違っていなかったことに気付かせる。その夜、家に帰ったピーターは、また緑の髪に生えて欲しいと思っていた。
雑感
RKOは右翼のハワード・ヒューズ傘下に入り、撮影中だったこの反戦映画は様々な妨害を受けた。主演のディーン・ストックウェルはヒューズ直々に詰問されたそうだが、怯むことなく対抗したという。それがあってか、後に映画「タッカー」(1988)でストックウェル自身がハワード・ヒューズを演じ、各賞の助演男優賞を受賞した。
結局、ジョセフ・ロージーとベン・バルツマンの二人が赤狩りの対象になり、ロージーはヨーロッパに移り監督を続けた。
主題歌「ネイチャー・ボーイ」はこの映画のためのオリジナルである。映画の中でも頻繁にコーラスがBGMに使われている。
映画自体はアメリカでこけたから、売れるわけはなかったのだが、同年にナット・キング・コールが吹き込んで大ヒットしてしまったため、人々の心に強く残った。
欧州では戦災孤児の問題は切実であり、この映画はロングランになった。
スタッフ
製作スティーブン・エイムス
監督ジョセフ・ロージー
脚色ベン・バーズマン、アルフレッド・ルイス・レヴィット
原作ベッツィ・ビートン
撮影ジョージ・バーンズ
音楽レイ・ハーライン
音楽監督C・バカライニコフ
主題歌イーデン・エイベス「ネイチャー・ボーイ」
キャスト
おじいさん(芸人) パット・オブライエン
エヴァンス医師 ロバート・ライアン
ブランド先生 バーバラ・ヘイル
ピーター少年 ディーン・ストックウェル
マイケル リチャード・ライオン
王様 ウォルター・カトレット
ヌードセン医師 サミュエル・S・ハインズ
ディビス氏 レジス・トゥーミー
バイパー氏 チャールズ・メレディス
散髪屋 デヴィッド・クラーク
レッド パイリー・シェフィールド