(◎)気力,体力ともに充実してるのに定年退職になった男が、その会社を嵌めて一騒動を起こすコメディ映画。
監督はハーモン・ジョーンズで、脚本はラマール・トロッティ。
主演はコール・ポーターの盟友である俳優モンティ・ウーリー。
共演はセルマ・リッター、デビッド・ウェイン、ジーン・ピータース、コンスタンス・ベネット。
マリリン・モンローも脇役で登場する。
白黒映画。
あらすじ
長年勤めた印刷工を65才の誕生日で定年退職になったジョン・ホッジスは憤懣やるかたなかった。自動車メーカー「連合」が株を買収して親会社になって以来、親会社と同じ定年退職制度が導入されるようになったのだ。印刷工は熟練工であるほど重用されているのに、一定の年齢で定年退職させるとはなんたることか?孫娘のアリスは社長に抗議した方がいいと言うが、それを聞いてジョンは、「連合」の会長に化けて、社長に面会を申し込むことを思いつく。
翌日、早速会社に連合会長として乗り込むと、会社は大慌てになる。ジョンは、社長に定年制度は自動車メーカーならいざ知らず、印刷業には不向きな習慣であり効率が悪化すると警告する。社長は、感服して商工会議所でのスピーチをお願いする。そこでそのスピーチは、インフレに対する処方箋に関するものであり、夕刊は一面で大々的に扱った。孫娘の婚約者ジョーは、ジョンの姿を見掛けて、度肝を抜かれる。その夜、社長と妻は地方の名士クラブにジョンを招待する。妻ルシルは、彼女を褒めそやしダンスを踊ってくれるジョンと仕事しか興味のない夫を比べて、自分の人生は何だったのかと悩む。そして家に帰ってから、夫に離婚を申し込む。一方、ジョーはホッジス家に行き、ジョンが連合会長に化けていたことを告げる。
翌日になって、ジョンは復職することになった。しかし、連合会長はニュースを見て偽物が現れたを知る。社内で検討するが、会社の株価が上がっており、しばらく様子を見ることにする。人事部次長のエリクソンは、ジョンが連合会長に化けていたことを知り、社長に直訴するが、外部に秘密を漏らすわけにはいかない社長はエリクソンを左遷してジョーを次長に昇進させる。そして社長は、ルシルにジョンがしがない印刷工である事を暴露する。ところが、ルシルは喜んでジョンの元に去る・・・。
雑感
大人のおとぎ話だ。作風は、フランク・キャプラやエルンスト・ルビッチを思い出させる。
でも65才定年退職制度がなくなると、兵役を終了した若者の雇用が失われるし、産業の活気が失われる。米国のことだから、年金制度が十分でないため企画された映画だろう。だが定年退職者のうち希望するものだけ嘱託として再雇用するのが現実的だ。
モンティ・ウーリーは、エール大学以来のコール・ポーターの盟友でともに一生独身である。ブロードウェイ俳優として活躍し、晩年は映画界でも、お爺さん役で重宝された。
セルマ・リッターは、ぶっきらぼうな嫁役で好演。
マリリン・モンローは、20世紀フォックスと二度目の契約をした後の初の作品。出番は数回あって、出演者序列も6番目と上がってきた。脇役だけど端役ではない。「モンキー・ビジネス」のような色気を振りまくでもなかった。社長夫人役のコンスタンス・ベネットは、若いモンローの勢いに嫉妬したそうだ。
スタッフ
監督 ハーモン・ジョーンズ
原作 パディ・チャイェフスキー
脚本 ラマール・トロッティ
製作 ラマール・トロッティ
撮影 ジョセフ・マクドナルド
音楽 シリル・J・モクリッジ
キャスト
ジョン・ホッジス モンティ・ウーリー
デラ・ホッジス(嫁) セルマ・リッター
ジョー・エリオット(孫娘の婚約者) デビッド・ウェイン
アリス・ホッジス(孫娘) ジーン・ピータース
ルシル・マッキンリー(社長夫人) コンスタンス・ベネット
ハリエット(社長秘書) マリリン・モンロー
ジョージ・ホッジス(息子) アライン・ジョスリン
ルイス・マッキンリー(社長) アルバート・デッカー
フランク・エリクソン(人事部次長) クリントン・サンドバーグ
ハロルド・P・クリーブランド(連合会長) マイナー・ワトソン
ホレス・ギャラガー ウォリー・ブラウン
ウィリー・マッキンリー(社長の息子) ラス・タンブリン
***
ホッジス家を訪れたルシルに愛を告白されたジョンは、困惑する。25年前に死んだ妻が忘れられないからだ。
そこへ連合会長が訪れる。会長は、ジョンに自分に化けた理由を尋ね、ジョンの説明に納得した。
ところが社長が妻を連れ戻しにやって来る。社長は、恋敵ジョンに対してクビだと怒るが、妻はジョンが言ったとおりに夫婦が寄りを戻すため、熱いキッスをするのだった。
会長は、ジョンの行為は犯罪にならないどころか、ニューヨークに来て自分の相談相手になってほしいと頼むが、ジョンは印刷工のままで良いと答える。会長は、ジョンが家庭を大切にしていることに敬服し、ジョンの会社での地位を保証すると約束して帰る。