実在の死刑囚バーバラ・グレアム(1923-1955)の無実を訴える手紙や当時の新聞記事に基づいて描かれる。
映画「ウェストサイド・ストーリー」「サウンド・オブ・ミュージック」のロバート・ワイズが監督、スーザン・ヘイワードが主演した。スーザン・ヘイワードはこの演技によりアカデミー主演女優賞を受賞した。白黒映画。

あらすじ

バーバラ・グレアムは偽証罪で有罪になり、保護観察中だが、彼女は妻になり母になった。夫がギャンブルに溺れ、彼女は子供のミルク代のために金が必要になった。
カルフォルニア州バーバンクで、モノハン夫人が惨殺された後、バーバラは自分が尾けられたのも知らず、犯罪者エメットとジャックと一緒にいた。そして二人共々バーバラは逮捕された。彼女には殺人発生時のアリバイがなかった。事件の夜に夫の賭け事を止めようとして、喧嘩をして夫を追い出し一歳に満たない息子と一緒にいたからだ。
新聞は最初から彼女も犯人の一人として扱っていた。刑務所で同室の女が、バーバラにアリバイをつくることを勧める。サムという男が面会に現れ、サムは彼女が有罪であることを認めなければ偽証を証言しないと言った。助かりたいばかりに彼女はそうだと答えてしまった。
公判が開かれたとき、サムは何と検察側の証人として現れ、バーバラに不利な証言をした。彼は警官だったのだ。第一審はバーバラら3人に死刑を宣告した。
ピューリッツァー賞を受賞したこともある新聞記者エド・モンゴメリーはこの事件を担当して彼女の有罪を確信していた。ところが心理学者パールバーグの主張に自説に疑わざるを得なくなった。
マシューズ弁護士やモンゴメリーの訴えにもかかわらず、再審請求は却下された。サンクエンティンに移送されて、処刑を待つばかりになった。

そこでも死刑執行が何度か延期されることはあったが、ついに執行の時が来た。彼女は観念した。
処刑はサン・クェンティンのガス室で行なわれた。彼女はガスが出るまで緊張していたが、ガスが噴出されるとやがて体を弛緩させた。彼女の最後の言葉は「私はやらなかった」だった。

雑感

これまで見た映画の中で最も絶望感を強く抱かせた作品だ。昔見たが、改めて見ても変わらない。最後の処刑室の電話が鳴るたびに一喜一憂するあたりも何度見てもドキッとした。
主役バーバラが死刑になるのは、子持ちながら身勝手な行いを繰り返したせいで身から出た錆だと思うが、さすがに最後は同情してしまった。バーバラの子供もいずれは自分の母親が死刑を知ったはずだ。そのときにこの実名映画を見てどう思ったのだろうか?
スーザン・ヘイワードは熱演だ。美しい人だと思った事はないが、本当に演技の上手な人だと思う。演技では無罪かもしれないと思わせたが、彼女はバーバラの有罪を確信していた。確かに映画では直接彼女が無罪である証拠は何も示されない。彼女の供述だけである。
新聞記者エドワード・モンゴメリーも実名で登場するが、一旦は自分たちが死刑に追い込んだ女性の再審請求や助命嘆願を手伝うのは、どんな気持ちだったのか。贖罪だろうか、疑わしきものは罰せずの精神だろうか。
尖って見えるほど若かったジェリー・マリガンのセプテットが演奏シーンで登場し、映画音楽(サントラ)も演奏している。ドラムのシェリー・マンが実質的リーダーと思われる。落ち着いた雰囲気のアート・ファーマーが二番目にソロを取っていた。バド・シャンクを始めて正面から見たがイメージと違って、誰だかわからなかった。

スタッフ

監督 ロバート・ワイズ
製作 ウォルター・ウェンジャー
原案新聞記事 エドワード・モンゴメリー
原案手紙 バーバラ・グラハム
脚本 ネルソン・ギディング 、 ドン・M・マンキーウィッツ
撮影 ライオネル・リンドン
音楽 ジョニー・マンデル

キャスト

バーバラ・グレアム スーザン・ヘイワード
記者エド・モンゴメリー サイモン・オークランド
友人ペグ ヴァージニア・ヴィンセント
心理学者カール・パームバーグ  セオドア・バイケル
弁護士マシューズ ジョー・デ・サンティス
夫ヘンリー・グレアム  ウェスリー・ロウ
被告エメット・パーキンス  フィリップ・クーリッジ
被告ジョー・サント ジョン・クルーグマン
被告ブルース・キング ジェームズ・ファイブルック

ジャズコンボのメンバー

バリトンサックス  ジェリー・マリガン 
トランペット  アート・ファーマー 
トロンボーン フランク・ロソリノ
アルトサックス バド・シャンク  
ドラムス シェリー・マン  
ダブルベース レッド・ミッチェル
ピアノ ピート・ジョリー

 

私は死にたくない (I Want to Live!) 1958 ユナイテッド製作・配給 松竹=ユナイト国内配給

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