当時新進気鋭の劇作家福田善之の原作戯曲(舞台化は俳優座、演出千田是也)を基にして、真田十勇士の活躍をポップなミュージカルに仕立て、安保闘争に敗れた若者の群像を描いている。
監督加藤泰、主演萬屋錦之介。共演は渡辺美佐子、ミッキー・カーチス、ジェリー藤尾、千秋実、佐藤慶と言う風に東映の外から起用している。シネマスコープ作品。
あらすじ
関ヶ原の合戦で孤児となった子供たち、猿飛佐助ら10人が14年後、大坂冬の陣で再会する。彼らは何か生きている証拠が欲しかったのだ。そして真田幸村の呼びかけに応じて、豊臣方に加わる。
雪村は秀頼様にお目通りするが、側近は胡散臭い奴らばかりである。心を読むことに長けている佐助に何故か大野修理の心が読めなかった。
籠城策を採る豊臣方長老に業を煮やした真田幸村一行は、徳川本陣に夜襲を掛ける。しかし服部半蔵の軍団が現れ、あと一歩のところで撤退を余儀なくされる。
挙げ句の果てに真田幸村は織田有楽斎と大野修理に勝手な真似をするなとお叱りを受ける。
これで分かったことは、大坂冬の陣が八百長だったことだ。最終的に豊臣徳川両軍は和睦したが、大阪城の外堀だけでなく、内堀まで埋められてしまう。
翌年の大坂夏の陣では天王山の戦いで雪村が戦死する。既に勝負は決したが、戦いのない世で生きていても仕方がない佐助と半蔵は最後の忍法合戦に挑む。
雑感
加藤泰監督の時代劇の姿を借りた現代劇。東映もヤクザ映画がヒットする一方、時代劇が不況になり、今後の時代劇の姿を模索していたのだろう。
この頃の東映の忍者は、佐助も半蔵もみんな幻術使いだった。また真田十勇士は赤いマフラーで統一していた。
元ネタが新劇なので、萬屋錦之介(猿飛佐助)の相手役が渡辺美佐子(霧隠才蔵)である。
ミュージカル要員としてミッキー・カーチスやジェリー藤尾を起用しているが、好人事だ。
大河ドラマと違う真田幸村を演じた千秋実、若い河原崎長一郎、大野治長役の佐藤慶、ドレスを着た千姫を演ずる本間千代子も面白い。
でも敢えて言えば猿飛佐助の萬屋錦之介に若さが感じられず、そこが失敗かな。新劇風でもなかった。猿飛佐助はジェリー藤尾にした方が、良かったと思う。
スタッフ・キャスト
監督 加藤泰
原作 福田善之
脚色 福田善之 、 小野竜之助 、 神波史男
企画 小川貴也 、 翁長孝雄
撮影 古谷伸
音楽 林光
美術 井川徳道
配役
猿の佐助 中村錦之助
霧隠才蔵(むささびのお霧) 渡辺美佐子
由利鎌之助 ミッキー・カーチス
かわうその六 ジェリー藤尾
ずく入の清次 大前均
どもりの伊三 常田富士男
根津甚八 米倉斉加年
筧十蔵 春日俊二
穴山小助 河原崎長一郎
望月六郎 和崎俊哉
真田幸村 千秋実
大野修理 佐藤慶
織田有楽斎 明石潮
後藤又兵衛 阿部九洲男
木村重成 大村文武
豊臣秀頼 水木襄
千姫 本間千代子
淀君 花柳小菊
服部半蔵 原田甲子郎
坂崎出羽守 田中邦衛