徴兵前のエルヴィス・プレスリー主演のミュージカル映画。
囚人上がりの男が、芸能界スカウトや恩人のおかげで大スターに登り詰めるが、男は自分の魅力だけでその地位を得たと勘違いする。
「バターフィールド8」のパンドロ・S・バーマン製作。
ネッド・ヤングの原作を、ガイ・トロスパーが脚色してリチャード・ソープが監督した。
主演はエルヴィス・プレスリー、ヒロインはジュディ・タイラー、共演はミッキー・ショーネシー、ジェニファー・ホールデン。白黒映画。
あらすじ
南部出身のビンスは、歌は上手だが短気である。行きつけのバーで女性に嫌がらせを働く男に頭に怒り、喧嘩になった上に相手を殴り殺してしまう。彼は、故殺罪で懲役を課せられる。
ビンスは刑務所で、同房のカントリー・シンガーであったハンクからギターを教えてもらう。すると元々音楽の才能があったビンスは、メキメキと腕を上げる。見込みを感じたハンクは、娑婆に出たらビンスとバンドを組む契約を結ぶ。
先に出所したビンスは、レコード会社の美人スカウト、ペギーに歌を聞いてもらう。ペギーは、型にハマらず感じるままに歌えとアドバイスした。ペギーの狙い通り、ビンスは新しい歌い方を開発する。しかし彼の歌は、先輩歌手によってレコード化され、先にヒットしてしまう。
ペギーは、元の会社から独立し、二人で一緒にレコード会社を作る。ペギーは、最初のレコードを友人のディスク・ジョッキーに掛けてもらう。その直後からラジオ局にリクエストの電話が次々と鳴り響く。ついにビンスのレコードは、大ヒットする・・・。
雑感
ミュージカル映画と言うより、歌謡映画に近い作品。
エルヴィス・プレスリーは、映画俳優としては初期の、まだまだ大根役者の時期だ。演技は硬かったし、言われたことをこなすだけで一杯だった。
しかし、二階建て監獄を模したセットでエルビス・プレスリーが歌うシーンが印象的だ。あれは、刑務所を出てから歌手として初めてテレビ番組に登場した際の歌唱シーンだった。この見事なセットと振付があるから、忘れられない作品になっている。
エルヴィス・プレスリーは、この映画を見ていないと言われる。ヒロインのジュディ・タイラーが、撮影終了三日後、交通事故で亡くなったからだ。
ちなみに、有名な主題歌「監獄ロック」は日本でもカバーされており、翌1958年には日本語訳詞で浜村美智子、小坂一也、平尾昌晃がカバーしている。中でも浜村美智子は、「バナナ・ボート」で紅白歌合戦に選出されていたが、紅組の曲で男性コーラスを使うのは当時の規定違反だったため、実際に紅白歌合戦で歌ったのは「監獄ロック」だったという説がある。
スタッフ
監督 リチャード・ソープ
製作 パンドロ・S・バーマン
脚色 ガイ・トロスパー
原作 ネッド・ヤング
撮影 ロバート・ブロナー
音楽監督 ジェフ・アレクサンダー
キャスト
ヴィンス・エベレット(囚人) エルヴィス・プレスリー
ペギー・バン・アーデン(スカウト) ジュディ・タイラー
ハンク・ホートン(先輩囚人) ミッキー・ショーネシー
ショアーズ氏 ボーン・テイラー
女優シェリー・ウィルソン ジェニファー・ホールデン
テディー・タルボット ディーン・ジョーンズ
ローリー・ジャクソン アン・ニーランド
***
人間不信だったビンスは、金銭欲が強かった。ペギーとは、ビジネス上の関係を壊さないためにも、手を出そうとしなかった。それに対して、不満を抱いたペギーは彼から離れていく。
ハンクが出所して来た。彼はかつての契約を持ち出して、ビンスの出演する番組にバーターで出演するが、古いスタイルのカントリー音楽のため、出番を丸ごとカットされる。ハンクは歌手を諦めて、生活のためビンスの付き人となる。とは言え、犬の世話係でしかなかった。
ビンスは、ハリウッドに進出し、映画を撮り始める。話題作りのために、最初の共演相手シェリーとあちこちでデートをする。
ビンスは、自分たちのレコード会社を他社に売却しようとしたので、ペギーと大喧嘩になる。ペギーは、会社だけがビンスとの大切な思い出だったので、売りたくなかったのだ。
ビンスの思いやりのない振る舞いにハンクは怒り、思わず手が出てしまう。彼のパンチはビンスの喉に当たって、ビンスは気を失う。ビンスは入院し、歌手を続けていけるか状態になる。だが、ペギーの愛ある介護で無事に回復した。ようやく歌えるようになったビンスは、ハンクを許しペギーに愛を告白した。
(実際にこの撮影中にプレスリーが喉を痛めて手術したのは本当だ。銀歯を飲み込んでしまい、肺の手術をした)