レジナルド・デンハムとエドワード・パーシー合作のブロードウェイ・ホラー劇の映画化。脚色は原作者の一人デンハムにギャレット・フォートが加わり、チャールズ・ヴィダーが監督した。白黒映画。
主演は「笑わない女優」として有名でのちに後に監督業にも進出したアイダ・ルピノ、「そして誰もいなくなった」のルイス・ヘイワード。共演は美人のイヴリン・キース、チャールズ・ロートン夫人のエルザ・ランチェスター、エディス・バレット、イソベル・エルソム等である。
配給はセントラル映画社(進駐軍の関係団体)であり、戦後間もなく(1946年9月)に公開された。
あらすじ
英国の田舎にある館には、女主人のフィスク夫人、家政婦のエレン、下女ルーシーの3人が住んでいた。エレンはロンドンに知的障害を負った姉が2人いて仕送りをしていたが、部屋を荒らすので家主から追い出されてしまう。フィスク夫人は数日なら姉二人を歓待すると約束し、エレンはロンドンへ二人を迎えに出かける。
留守中にエレンの甥アルバートが訪れて来た。フィスク夫人は、彼が金に困っていることを見抜き融通してあげる。アルバートと入れ替わりにエレンが姉達を連れて帰って来たが、6週間居ついた上に出て行く様子のない姉達にフィスク夫人は怒り心頭。エレンを解雇して、二人の姉とともに退去を命ずる。
エレンは「可哀想な姉を見捨てるのか」とフィスク夫人を逆恨みし、下女のルーシーが歯医者に行った隙を突いて、夫人を背後から絞殺する。帰ってきたルーシーには、夫人は急な海外旅行に出かけたと伝える。
ある夜、アルバートが再訪する。彼は横領罪で告訴され警察に追われていた。エレンは追い出したかったが、アルバートは可哀想な甥を見捨てるのかと迫る。
彼はフィスク夫人の不在に不自然さを感じ、ルーシーと協力して真相を探り出そうとする。そこで、ある夜ルーシーに夫人のかつらを付け、まるで夫人が夜中に帰ってきたように見せかけた。それを見たエレンを恐怖のあまり失神してしまった。アルバートは確信しエレンに推理を告げると、ついに彼女は自供する。しかしルーシーが立ち聞きして、警察に密告してしまう。警察に関わりたくないアルバートは逃げ出すが、近くにいた警官に逮捕され、エレンも覚悟を決めて警察に自首する。
雑感
アイダ・ルピノが演じると何時もそうだが、これも意外な秀作である。舞台劇を基にしているため、全編スタジオ収録で単調なはずだが、彼女の演技力で間を持たせている。
この作品のポイントは、倒叙推理ものなのだが、刑事コロンボ役を横領犯アルバートに担わせていること。見事な推理の上に、心証も固め、犯人を指摘するが、そのことが自分の首を絞めていることに気付いたときは遅かった。
ちなみにアルバートも年の離れた長姉の遺児であり、主人公エレンは姉三人に祟られたことになる。
エルザ・ランチェスターは夫君チャールズ・ロートンとも「情婦」で共演していたので有名だが、もう一人の姉役エディス・バレットは常にあらぬ方を見つめていて危ない感じを出し、名演だった。
スタッフ・キャスト
監督 チャールズ・ヴィダー
原作 レジナルド・デンハム 、 エドワード・パーシー
脚色 ギャレット・フォート 、 レジナルド・デンハム
撮影 ジョージ・バーンズ
家政婦長エレン アイダ・ルピノ
甥アルバート ルイス・ヘイワード
姉エミリー エルザ・ランチェスター
姉ルイーザ エディス・バレット
若い家政婦ルーシー イヴリン・キース
レオノーラ・フィスク夫人 イソベル・エルソム