ミステリ映画。第二次大戦末期、日本を救うために日本国籍を捨てた男が、十七年ぶりに帰郷した事から発生する殺人事件と父娘の心情を描いている。
松本清張の長編推理小説を星川清司が脚色し、貞永方久が監督した。
カラー映画で撮影は坂本典隆。
主演は島田陽子、竹脇無我。
共演は芦田慎介、乙羽信子、山形勲、岡田英次、藤岡琢也。
雑感
貞方方久監督は、野村芳太郎と比べるとミステリーには向いていない。
全体に盛り上がりに欠けて、安上がりに作った二時間ドラマのようだった。
それに○○○○が犯人というのもどうにも締まらない。
島田陽子も今ひとつ魅力を引き出せていない。
キャスト
芦田伸介 野上顕一郎
乙羽信子 野上孝子
島田陽子 野上久美子
竹脇無我 添田彰一
山形勲 滝良精
岡田英次 村尾芳正
藤岡琢也 伊東忠介
笠智衆 福竜寺住職
田宮二郎 ナレーター
スタッフ
製作 杉崎重美
原作 松本清張
脚本、監督 貞永方久
脚本 星川清司
撮影 坂本典隆
音楽 佐藤勝
ストーリー
昭和36年の日本。
新聞記者の添田は、奈良で婚約者の野上久美子とデートを楽しんでいた。そのとき、お寺の芳名帳の中に、久美子は死んだ父の野上とよく似た文字を発見した。珍しい中国の書道家の筆跡を真似たものであり、久美子も真似ていたので覚えていたのだ。
翌日、久美子は添田と筆跡の確認するが、文字はページごと消えていた。
久美子の父野上は、ヨーロッパの中立国公使の書記官を務めていたが、任地で病死したと公電で伝えられている。
添田は、戦中の野上の部下で現在外務省欧亜局課長の村尾や新聞社の先輩滝と面会するが、「知らぬ存ぜぬ、忘れたまえ」と言って、何かを知っているようだった・・・。
ある日、留守の久美子を元公使館付軍人の伊東が訪問する。さらに、伊東は久美子と母孝子を歌舞伎座に招待する。添田は二人を尾けていると、何故か村尾、伊東も現れ外務省のOB会のようだった。
添田は苦労した結果、野上がロベール・バンネ-ドと名を変えて来日していることを掴む。長崎に行くと、野上は京都に発った直後だった。。
野上は、戦争末期に講和条約成立のため、日本国籍を捨ててまでして連合国と接触を続けていたのだ。この和平工作の際にアメリカに漏らした情報がもとで伊東の部隊を壊滅させてしまった。だから、今や右翼の伊東は野上を殺したいと恨んでいた。
当時書記だった内田が殺されたと村尾から知らされる。内田が、野上を日本に呼んだのだ。野上は、伊東に呼び出される。だが翌日の新聞は、伊東が自殺した事を報道する。実は、伊東が所属する右翼のフィクサーがアメリカとの信頼関係を守るために暴走する伊東を粛清したのだ。
添田は、野上の行方を聞き出し、久美子に会いに行くように告げた。観音崎に立つバンネ-ド(村尾)に久美子が近づく。お互いに父としてではなく娘としてでもなく、初めて出会う二人として、一緒に海を眺めた。