ジェラルディン・マッキーワン主演のミス・マープル・シーズン3第四作にして最終作品
今回はノン・シリーズ(特定の探偵が現れない作品の傑作「無実はさいなむ」を大胆に脚色している。なかなか良い出来だ。

 

演出 モイラ・アームストロング
原作 アガサ・クリスティ
脚色 スチュアート・ハーコート
配役:
ジェラルディン・マッキーワン : ミス・マープル
ジュリエット・スティーブンソン :グエンダ  (映画「エマ」出演)
Alison Steadman    : Kirsten Lindstrom
Stephanie Leonidas : Hester Argyle
Lisa Stansfield    : Mary Durrant
ジェーン・シーモア    :  レイチェル (「007 死ぬのは奴らだ」)
Julian Rhind-Tutt : Dr Arthur Calgary

 

裕福な夫人レイチェル・アーガイルが殺された。
すぐ彼女の養子の一人ジャッコが逮捕され、程なく死刑になった。
二年後、寡夫になったレオ・アーガイルは秘書グウェンダと再婚することになった。
ミス・マープルも招待される。
しかし南極帰りのカルガリ博士が二年前のジャッコのアリバイを証言したため、一族は再び疑心暗鬼にさいなまれる。
家族のなかに、まだレイチェル殺しの真犯人はいるのだ。

 

IMDBでは、いつものように評価は極端に分かれている。
アガサ・クリスティ原理主義者は、ノン・シリーズに名探偵を登場させることがお気に召さない。
まして筋書きが、原作と似ても似つかないものになっている。
でもこの作品にかぎっては配役、脚本ともに力が入った善いものである。

 

ハリウッドでも有名な女優であるジェーン・シーモアが出演する。
ジュリエット・スティーブンソンもよく知られた顔だ。
脚本も悪くない。原作をいっそ変えるなら、これぐらい大胆にやる方が面白い。

 

同じ原作の映画「ドーバー海峡殺人事件」(1984)があるので、脚本家も力が入ったようだ。
難を言えば、犯人がはじめからやや目立ちすぎていた。原作を知らない人でも、すぐわかってしまう。

 

ジェラルディン・マッキーワンのミス・マープルを総括すると、キャラが立ちすぎて、ジョーン・ヒクソンの作り出したミス・マープル(これが決して原作似とは思わない。しかしアガサ・クリスティは彼女にやって欲しかったそうだ)と、かけ離れてしまった。
ミス・メープルソープか何か、新しいキャラクタを創造していれば、これほど批判されることはなかった。

(彼女は体調を崩したらしい。ほどなく亡くなった。ご冥福をお祈りする)

次のミス・マープル・シーズン4は、既に放送が始まっている。
作品は「ポケットにライ麦を」「殺人は容易だ」「何故エバンスに頼まなかったか」「魔術の殺人」である。
「殺人は容易だ」はビル・ビクスビー主演で映画化されているノンシリーズ。
「何故エバンスに頼まなかったか」は本来トミーとタッペンスのシリーズだ。

 

主演はジュリア・マッケンジー(下の写真)。
マッキーワンと同じ舞台畑の人だ。ぱっと見は,「奥様は魔女」のクララおばさんに似ている。
でもインタビューでは
I’m under no illusions about the size of the task ahead.
と言っている。イギリスの国民的仕事を前にして明鏡止水だそうだ。
なかなか頼もしい。
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無実はさいなむ 2007 ITV

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