ポーランドはドイツ軍に対して勝利した後、ソ連の支援を受ける共産党が英国の支援を受ける旧体制派を抑えて政権を取る。旧体制派は共産党政権に転んだ者も多かったが、あくまで抵抗活動を続けた人間もいた。この映画は旧体制派に属したテロリストの最後の一日を描いている。
監督はアンジェイ・ワイダでこの作品でヴェネチア国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞する。
主演はズビグニエフ・チブルスキー、ヒロインはエヴァ・クジイジェフスカが演ずる。

あらすじ

一九四五年五月八日ポーランドの田舎町。教会のそばで、党地区委員長シュツーカを暗殺するために二人の男が待ち伏せていた。一人はアンジェイ、もうひとりは若いマチェク。彼等はロンドンにあったポーランド人の抵抗組織へ入って、イギリス軍と共にドイツと戦い、解放後は町長やワーガ少佐の指令でソ連共産党系の新ポーランド政府と地下抵抗活動している。見張りを勤める市長秘書の知らせで、車でやって来た男を殺すが、それは護衛に過ぎず、後からシュツーカの車はやって来た。
夕方、ラジオが東部戦線におけるドイツの降伏を告げる。シュツーカがホテルに現れ、マチェックは始めて誤殺に気づく。
バーには、美人給仕のクリスチナがいた。ソ連から帰国したばかりのシュツーカはポーランドに残した息子のことが心配だった。妻は強制収容所で死んでいた。シュツーカは義姉を訪ねるが、息子はワルシャワ蜂起以後、行方不明だった。姉の家族は秘かに国外脱出を計画していた。
アンジェイはゲリラ活動を指揮するため、明日早朝にワルシャワへ発つ。マチェクはそれまでに暗殺を実行することを約束した。
彼はクリスチナを今夜十時、部屋へ誘ったが、相手にされなかった。市長秘書は新聞記者に市長が大臣になったと教えられ、彼と祝杯を上げる。別室の祝賀会場には市長一行も到着したが、秘書はバーで酔っ払ってしまい祝賀会には顔を見せない。
クリスチナがマチェクの部屋を訪れた。女と抱き合って,マチェクに初めて愛情というものが湧いてくる。二人は散歩をするが、雨が降りだした。教会の廃墟に雨宿りし、女は「燃え尽きた灰の底に、ダイヤモンドがひそむ」というノルウィドの詩を刻んだ墓標を読む。マチェクに普通の生活がしたいという感情が湧いてきた。奥に入ると、死体置場になっていて、今日殺した二人の遺体があった。
軍の兵士が抵抗派を捕えた。その中にシュツーカの息子がいた。マチェクはアンジェイを見かけ、思わず逃げ出す。アンジェイに暗殺をやらないなら俺がやると言われて、マチェクは思い直し今晩シュツーカを暗殺する覚悟を決めた。
祝賀会場では市長秘書が泥酔して消火器をまき散らしていた。市長一派は彼をゴミのように外に放り出した。マチェクは軍から連絡を受け息子を引き取りに行くシュツーカを付ける。そして彼の胸に銃弾を何発も叩き込む。彼が絶命してマチェクの胸に倒れ込んだ。その瞬間、花火が一斉に打ち上げられた。
マチェクは、クリスチナに別れを告げて、4時半の列車に乗るため宿を発つ。アンジェイからも見放された市長秘書がすがろうとしてマチェックは逃げ出す。そのとき兵士にぶつかり拳銃を見られる。マチェクは兵士に追われ、撃たれる。祝賀会はまだ続いている。市長らが音が外れたショパンのポロネーズを踊っている。クリスチナはその輪に入り涙を流していた。マチェクは町はずれのゴミ捨て場を逃げていたが、そのうち倒れて絶命する。

雑感

主人公は虚無なテロリストでなく、家庭の暖かさを渇望している普通の若者だった。それだけでも救われた気がする。

当時のポーランド政府は旧体制派が最後に野垂れ死するシーンを見て、共産主義に反するものでないと考えて、この映画の公開を許したようだ。しかし誰が見ても、この映画は革命的には見えない。ポーランド政府内部にもマチェクに同情する人々は大勢いたようだ。

撮影やシナリオには、群像劇のような手法が用いられており、フランス映画やイタリア映画の影響が見られた。

スタッフ

監督 アンジェイ・ワイダ
脚色 アンジェイ・ワイダ 、 イェジー・アンジェイエフスキー
原作 イェジー・アンジェイエフスキー
撮影 イェジー・ウォイチック
美術 ロマン・マン

キャスト

マチェック ズビグニエフ・チブルスキー
クリスティナ エヴァ・クジイジェフスカ
シュチューカ書記 ヴァーツラフ・ザストルジンスキ
アンジェイ アダム・パウリコフスキー
ジェフノスキー ボグミール・コビェラ
ポーター ジャン・チェチェルスキ

灰とダイヤモンド Popiół i Diament 1958 ポーランド製作 NCC国内配給

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