(⭐︎)橋幸夫が初出演した歌謡映画風時代劇。
「潮来笠」がレコード大賞最優秀新人賞を受賞した翌年1月に早くも映画化された。
潮来あたりの利根川水系を舞台にして、主人公渡世人(小林勝彦)と壺振り女(近藤美恵子)の恋愛の行方を描いた娯楽作品。
母のリクエストで我が家の新春映画劇場で上映した作品だ。
西村八郎のオリジナル脚本を井上昭が監督した。
共演は丹羽又三郎。
雑感
橋幸夫は僅かな登場シーンで、伊太郎の行方を探しているお加代に潮来に伊太郎はいるよ、と教える役だ。
B級役者を揃えて、橋幸夫は特別出演扱い。初めての映画では仕方がない。
でも、こうやって各社でも揉まれて、映画でも主役を演じるようになったのだから、努力の人なのだろう。
その頃、伊太郎はお加代を探して関宿へ探しに行った後だった。まるでこのあたりの筋は映画「君の名は」だった。
後半、伊太郎は源五郎に捕まり、簾巻きにされて利根川に沈められるというところだ。
一目で良いから九衛門に暇乞いをしたいという伊太郎の願いを聞き届けて、金九郎が身代わりになるから3日間だけ猶予を与えることになる。
この辺は太宰治の小説「走れメロス」ではないか。何と安直な映画だろうか!
しかし、85歳の母は「映画ってこんなのが良いのよ」と喜んでいた。
近藤美恵子は、昭和29年度ミス・ユニバース日本代表だが、大映入り後は冴えなかった。ほぼ脇役続き。やっと来たヒロイン役のチャンスもあまり活かしていない。
丹羽又三郎は、新東宝時代は中村又三郎と名乗っていた。だから脇役の大映大部屋俳優に囲まれると、オーラが漂ってくる。コミカルな天知茂と言った感じ。
のちにテレビドラマに転じ「ジャイアント・ロボ」で敵幹部スパイダー、「仮面ライダー」でブラック将軍を好演したため、特撮俳優と若い子に思われているかもしれない。
キャスト
潮来の伊太郎:小林勝彦
お加代:近藤美恵子
おみね:小桜純子(新人)
金平金九郎:丹羽又三郎
料亭の女お米:藤原礼子
関宿の久衛門:舟木洋一
笹川の繁蔵:香川良介
手賀沼の勘六:尾上栄五郎
関宿の乾分半次:浜田雄史
島村の源五郎:清水元
川千鳥の新助:橋幸夫
スタッフ
製作:武田一義
企画:財前定生
脚本:西村八郎
監督:井上昭
撮影:牧浦地志
音楽:小川寛興
ストーリー
上州取手宿。
ある賭場で、潮来の伊太郎は女賭博師お加代と差しの勝負をした。その結果、伊太郞は着物から自慢のドス(刀)まで巻き上げられてしまう。間の悪いことに、一宿一飯の恩義がある松戸一家から喧嘩に呼び出される。仕方なく伊太郞は、長ドスの代わりに棒を振り回す。敵に追い詰められて危機一髪となると、お加代が現れて長ドスを伊太郎に投げ渡す。途端に無頼の強さを見せて逆に敵を追い詰める。
そんな中、敵の用心棒である金平金九郎は、突然腹痛に苦しみだした。その有様を見て伊太郎は、時を改めて勝負しましょうとドスを収める。
お加代や用心棒をクビになった金九郎は、伊太郎に惚れ込んでしまう・・・。
一年後、お加代は潮来の料亭女中になっていた。一方、伊太郎は病気になって、関宿(現在の野田市)の久兵衛の家で看病されていた。久兵衛の妹おみねは伊太郎を好きだったが、全快した彼は潮来へ旅立って行く。
ところが、お加代はその頃、川千鳥の新助という歌の上手い渡世人と出会い伊太郎が関宿にいたと聞き、急いで旅に出る。
すると久兵衛が、縄張り争いで手賀沼の勘六一家に闇討ちされて重傷を負う。
おみねは、佐原神社の祭礼で賭場を開く島村源五郎一家に金策を依頼するが、源五郎はおみねが自分の妾になるなら金を出すと答える。
お加代も旅路で足を挫いたため、源五郎一党に同行していた。
そこへ、お加代と行き違いになった伊太郎が帰って来た。事情を知った伊太郎は、源五郎一家相手に一暴れするが、最後は捕まってしまう。
伊太郎は大親分である笹川繁蔵に勘六一家との経緯について打ち明け、三日間だけ自由にさせてくれと頼む。源五郎は繁蔵から話を向けられ、源五郎の用心棒になっていた金九郎が伊太郎の身代りとなることもあって渋々認めた。
関宿に戻った伊太郎は、久兵衛に代わって手賀沼勘六一家を一人で倒して、縄張りを取り戻す。
ところが帰途、源五郎の子分が伊太郎を待ち伏せて、崖の底に突き落とす。
源五郎は、約束の時間に金九郎を簀巻きにする。
しかし、おみねに助けられた伊太郎が源五郎を成敗する。
翌朝、伊太郎は去っていくが、お加代も後を追っていく。