一度は故郷の青森五所川原を捨てた女が、ヤクザの抗争に巻き込まれて逃げる男を連れ、再び津軽に戻ってくる。女は事故で亡くなった父と兄を弔うために奔走するが敵わない。一方、男は津軽の海に新しい人生を見つける。女は去り、男は残るが運命は皮肉だった。
斉藤耕一監督が国鉄の”Discover Japan” ブームを背景にして、望郷映画をカメラワークに拘って撮った。もちろんメジャー資本に受け入れられるわけもなく、ATGとの共同製作だ。
主演は江波杏子、織田あきら(新人)であり、中川三穂子が共演。
キネマ旬報日本映画1973年第一位、日本映画監督賞、主演女優賞(江波杏子)の三冠を手にしている。
なお津軽じょんがら節は、映画の最初と最後に演奏シーンが出てくるだけだ。おそらく津軽が二人にとって安住の地でなかったように、本物の津軽じょんがら節はもう聞けないと言いたいのだろう。でも津軽じょんがら節の復活は、この映画のおかげもあった気がする。同年から高橋竹山の渋谷ジャンジャンでの公演が始まり、敏感な若者がじょんがらに興味を持つようになったのだ。
あらすじ
雑感
初めに暗い津軽の海が映され、やがてイサ子(江波杏子)が真っ赤なコートを着て現れる。如何にもカメラにうるさい斎藤監督の趣味だ。津軽出身のイサ子が結局津軽に染まれず都会に戻ることを暗示している。一方、黒いヤクザスーツで現れた徹男(織田あきら)の方は津軽になじむが、東京のヤクザがそれを許さなかった。津軽の景色は灰色なのだ。
江波杏子は女優になるべくして女優になった人だ。しかし76才で亡くなった。女性の平均年齢からすると早すぎる。ご冥福をお祈りする。
織田あきらは、この映画でデビュー後、ドラマ「Gメン’75」の悪役などで活躍し、1988年に引退している。その後は活動していないようだ。この映画の演技は地だったと思う。逆に言えば不器用な人だった。
東大文学部卒の佐藤英夫がスケベな呑み屋の親父役で出演。「チャコちゃん」シリーズの二代目パパとしてお茶の間でも人気があったが、その裏でこんなアルバイトをしていたとはw。
スタッフ
監督 斎藤耕一
製作 島田昭彦 、 多賀祥介
脚本 中島丈博 、 斎藤耕一
撮影 坂本典隆
音楽 白川軍八郎 、 高橋竹山
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配役
イサ子 江波杏子
徹男 織田あきら
ユキ 中川三穂子
豊 寺田農
ユキの祖母 戸田春子
ユキの母 東恵美子
金山 佐藤英夫
塚本 西村晃