死刑執行シーンが心に残る、ジェームズ・キャグニー主演の名作ギャング映画。
ローランド・ブラウンの原作をジョン・ウェクスリー、ウォレン・ダフ、ベン・ヘクト、チャールズ・マッカーサーが脚色し、マイケル・カーティズが監督した作品。
共演はパット・オブライエン、アン・シェリダン、ハンフリー・ボガート、ジョージ・バンクロフト、ジャニーズ事務所の先祖のようなデッドエンド・キッズら。
白黒映画。
あらすじ
1920年、二人の子供ロッキーとジェリーが万年筆を盗もうとして大人に見つかり追いかけられ、ジェリーは逃げ切ったが、ロッキーは捕まり少年院に送られた。その後もロッキーは更生できずギャングになり、大物になるがやがて逮捕され刑務所に収監された。
1935年、刑務所から出たロッキーは故郷へ帰り、神父になったジェリーと再会する。ジェリーの紹介で借りたアパートにはローリーという幼馴染みがいて、今はすっかり美しい未亡人になっていた。
ロッキーは10万ドルの財産管理を依頼したフレイジャーに会いに行く。フレイジャーはその金を元手に賭博場を開き大儲けしていたが、政治家キーファーが現在のオーナーだから相談しなければいけないと言って、500ドルを渡してロッキーを帰らせる。
ロッキーは帰途、六人の少年掏摸(デッドエンド・キッズ)に持ち金を盗まれるが、かつてアジトに使っていた地下室に行くと彼らが隠れていた。子供たちはロッキーが憧れのギャングであるロッキー・サリバンというと素直になった。ロッキーは気前良く子供たちを部屋に招待する。そこへジェリーがやって来て、子供たちに体育館でバスケットしようと誘うと、ロッキーも賛同したので彼らは渋々参加した。
バスケットの試合が終わった後、ロッキーは体育館に見学に来ていたローリーと一緒に帰る。彼女と良い雰囲気になりかけたが、尾けられているのに気付く。ロッキーはローリーを帰して一人で店に入ると、尾行者も入ってくる。刺客の親玉は店内に電話が掛けロッキーが呼び出すが、怪しいと思ったロッキーは奥に隠れてしまう。尾行者が電話に代わりに出ると、暗殺者が知らずに電話室の男を射殺してしまう。
ロッキーは抜け出してフレイジャーの部屋へ行き、フレイジャーを脅すとあっさりキーファーが首謀者だと白状した。ロッキーが部屋の金庫を漁るとキーファーとフレイジャーの不正の証拠が出て来た。それを奪った上で、フレイジャーを誘拐してボイラー室に閉じ込める。そしてキーファーを逆に脅迫して10万ドルを回収した。このフレイジャー誘拐事件が後々ロッキーたちを追い詰めることになる。
ロッキーは10万ドルから子供たちに100ドルから50ドルの小遣いをやる。またローリーにも豊かな生活を与えて、賭博場にも連れて行く。
子供たちはもらった金で豪遊して問題になる。ジェリーはロッキーに注意するが、子供たちのロッキー礼賛は止まない。このままでは子供たちは堕落するだけだ。子供たちの良い手本になるため、ジェリーは地元マスコミや警察と組んで暴力追放キャンペーンを始める。とくに問題にしたのが「フレイジャー誘拐事件」である。何故キーファーはフレイジャーが誘拐されたと通報したのに、それを取り消してロッキーが10万ドルを手に入れたか?
ロッキーは友人であるジェリーの行動を制限する気はなかったし、フレイジャーは陪審員を買収すれば良いと言う。しかし強硬派キーファーは暗殺すべきだと主張したので、ロッキーは切れてキーファーを射殺してしまい、ついでに目撃者であるフレイジャーも殺した。警察が急行しロッキー包囲網を張るが、ジェリーが説得を買って出て一人でロッキーの立て籠るビルに入る。ロッキーはジェリーと一緒にビルを出るが、警察を前にして逃げ出し、最後は足を撃たれて逮捕される。
ロッキーは裁判で死刑を宣告される。執行日にジェリーは面会を許され、ロッキーに対して子供たちのためにも惨めな死に方をして欲しいと頼む。ロッキーは人一倍プライドがあるので断った。そして余裕を保って処刑場に入り電気椅子室に入るところで、大声で助けてくれー!死にたくない!と叫んでから死んでいった。処刑の様子を報道するため見学していた新聞記者やラジオ局はショックで呆然としている。
子供たちはロッキーの死刑の様子を新聞で読んで、ショックを受けていた。ジェリーが顔を出すと彼らは処刑を間近で見た証人として、ロッキーがどんな様子だったか口々に尋ねるが、ジェリーが惨めで哀れだったと言うと、彼らの気持ちの糸が切れたように項垂れ、ジェリーがロッキーの葬儀をするから教会に来なさいと言うと、彼らは素直に付いて行った。
雑感
死刑を見て感動できるのは「私は死にたくない」だが、死刑を見て泣けるのがこの作品だ。ジェームズ・キャグニー演ずるロッキーは子供たちの憧れとしていつまでも覚えてもらいたかっただろう。しかしジェリーの言葉に心を動かされ、最後の瞬間ジェリーの言う通りにする。まさにロッキーとジェリーと神様しか知らない真実だ。
明示されなかったが、アン・シェリダン演ずるローリーは最後の方で賭博場の常連のようになっていたしロッキーの情婦になっていたのだろう。ジェリーに対してロッキーをいじめないで欲しいと言っていた。
ハンフリー・ボガートは3番目にクレジットされているが、みっともない悪徳弁護士役だった。普通の俳優ならこんな役でもジェームズ・キャグニーと一流映画に出て高いギャラをもらえるのだから、満足してもおかしくないが、あのハンフリー・ボガートがそうするのはショックだった。もっとこの悪役時代のボガートを見てみたい。
ジェームズ・キャグニーとパット・オブライエンはどちらもアイルランド系で親友である。だからこその配役だろうが、そもそもニューヨークのアイルランド系スラムを舞台にしているから、共演者はアイルランド人でなければいけなかった。
子役デッドエンド・キッズの六人組は最初に舞台で注目され、やがてユニバーサル映画「Dead End Kids」でデビューしたのでこの名前が付いている。その後、ワーナーに移籍して大活躍した。その後もグループ名称の変更や多少のメンバーの入れ替わりはあったが、長い間映画に出演していた。
スタッフ
監督 マイケル・カーティズ
原作 ローランド・ブラウン
脚色 ジョン・ウェックスリー 、 ウォーレン・ダフ、ベン・ヘクト、チャールズ・マッカーサー(最後の二人はクレジット無し)
撮影 ソル・ポリート
キャスト
ロッキー・サリバン ジェームズ・キャグニー
神父ジェリー・コノリー パット・オブライエン
悪徳弁護士ジェームズ・フレイジャー ハンフリー・ボガート
未亡人ローリー・ファーガソン アン・シェリダン
悪徳政治家キーファー ジョージ・バンクロフト
<デッド・エンド・キッズ>
スーピー ビリー・ハロップ
スウィング ボビー・ジャルダン
ビム レオ・ゴーシー
パッツィ ガブリエル・デル
クラブ ハンツ・ホール
ハンキー バーナード・パンスレイ