映画開始から10分間は、原作はアーネスト・ヘミングウェイの短編小説「殺し屋」とほぼ同じ内容だが、そこから続く90分間はオリジナルだ。ヘミングウェイの原作は被害者が殺される具体的な理由が何も述べていないため、映画がその理由を補う形になっている。

監督はロバート・シオドマクで、脚本にリチャード・ブルックス、ジョン・ヒューストン(ともにクレジット無し)の超豪華版。

主演はこれがデビュー作となったバート・ランカスター、共演は「ショウ・ボート」でブレークする前のエヴァ・ガードナーエドモンド・オブライエン、アルバート・デッカー。

アメリカ推理小説の賞の一つであるエドガー賞の最優秀映画賞を受賞。

あらすじ

田舎町に隠れ住んでいた元ボクサーのスウィードが二人の殺し屋によって暗殺される。(ここまでがヘミングウェイ原作の部分)

多額の保険金が掛かっていたので、保険調査員リアドンが派遣され調査に当たる。
保険金受取人はホテルのメイドだった。一度だけ生前のスウィードに会っており、愛人に逃げられて自殺するところを止めたことがあった。

調査を進めると、スウィードは愛する女性キティーの窃盗罪を被って、三年の刑を受けたことがあった。刑務所でもそのキティのことを仕切りに話していた。

出所したとき、キティはコルファックスの愛人になっていた。スウィードはコルファックス、ブリンキー、ダムダムの三人と組んで帽子会社の給与を奪ったが、スウィードが独り占めしたということが分かった。おそらくその後、キティに盗んだ金を持ち逃げされたのだろう。

リアドンはキティーをクラブに誘い出し、自白させる。その途端、殺し屋たち二人が襲い掛かり、スウィードの幼馴染みだったルビンスキー刑事によって二人とも銃殺される。

リアドンたちはキティーの自宅に向かうが、そこでは仲間割れが起こっておりダムダムとコルファックスが互いに撃ち合い、ダムダムは即死し、コルファックスは虫の息だった。キティーも近くに隠れているところを捕まる。

彼とキティーは初めから夫婦であり、愛し合っていた。そして彼らはスウィードの気持ちを利用して、盗んだ給料全部をコルファックス夫妻が独り占めしていたのだ。

 

雑感

「深夜の告白」「ミルドレッド・ピアース」と言った一連の映画に続くフィルム・ノワールの「傑作」である。違うところは大作家アーネスト・ヘミングウェイの短編小説をベースにしている点だ。

 

倒叙型ではなく、保険調査員リアダン(エドワード・オブライエン)が証人に食らいついて証言を得て、徐々に謎を解き明かしていくミステリになっている。

 

アクロバット芸人だったバート・ランカスターは33歳にして初映画で初主演に抜擢された。見事に応えて、スターダムを登り始める。

ファム・ファタールを演じたエヴァ・ガードナーは処女作ではなかったが、初の大役だった。まだ24歳だったが、既にミッキー・ルーニー、アーティー・ショウの二人と結婚し、ハワード・ヒューズと関係していた。

プロデューサーであるマーク・へリンジャーは最初にドン・シーゲル監督をオファーしたが、当時シーゲルはワーナーと契約していて法外な料金を提示されたので、ドイツから移住していたロバート・シオドマクを監督に指名した。彼にとってもハリウッドでの出世作になった。ドン・シーゲル監督は後にこの映画のリメイクである「殺人者たち」を撮ることになる。

 

初めの10分間を過ぎた後は、ヘミングウェイの短編にインスパイヤされたオリジナル脚本であり、脚本家名義はアンソニー・ヴェイラーだが実際は名脚本家リチャード・ブルックスと名監督ジョン・ヒューストンが書いている。二人とも他社(ワーナー)との契約があったので、名前を伏せた。

原作者ヘミングウェイには試写会に先駆けて見てもらい、喜んでもらったそうだ。

 

スタッフ・キャスト

 

監督 ロバート・シオドマク
製作 マーク・ヘリンジャー
原作 アーネスト・ヘミングウェイ
脚色 アンソニー・ヴェイラー(リチャード・ブルックス、ジョン・ヒューストン)
撮影 ウディ・ブレデル
音楽 ミクロス・ローザ

配役
スウィード    バート・ランカスター
キティ   エヴァ・ガードナー
保険調査員リアダン   エドモンド・オブライエン
建築業コルファックス   アルバート・デッカー
ルビンスキー刑事  サム・レヴィーン
リアドンの上司ケニヨン  ドナルド・マクブライド
同僚ニック    フィル・ブラウン
殺し屋アル     チャールズ・マッグロー
殺し屋マックス    ウィリアム・コンラッド
チャールストン   ヴィンス・バーネット
ダムダム    ジャック・ランバート
ルビンスキー夫人リリー  バージニア・クリスティーン

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