昭和17年4月18日、太平洋戦争で日本初空襲を試みたドゥリトル中佐のB25爆撃隊を描いた戦記映画。
参戦したテッド・W・ローソン大尉と従軍記者ロバート・コンシダインの手記を原作に、ダルトン・トランボが脚色し、マーヴィン・ルロイが監督している。
主演はヴァン・ジョンソン、共演はロバート・ウォーカー、スペンサー・トレイシー。
アカデミー特殊効果賞受賞。白黒シネスコ映画。
あらすじ
1947年、陸軍航空隊ローソン中尉はB25を主体とする秘密作戦に志願した。彼は半年前に結婚した妻のエレンと別れ、秘密作戦の基地エグリン島におもむいた。秘密保持の厳重な警戒のうちにローソンら志願者は奇妙な訓練を始めた。500フィート以内の極端に短い滑走路を時速50マイルで離陸し、低空飛行を続けるものだった。
いよいよローソンに出動命令が出た。副操縦士ダヴェンポート、航空士マクルア、射手サッチャー、爆撃手クレヴァーらとともにサンフランシスコからアラメダ海軍飛行場を経由して、多くのB25を艦載した航空母艦ホーネットへ向かう。出向して洋上でついに秘密作戦が明らかにされる。B25は東京、横浜、神戸、大阪に空襲を行ってから中国大陸に逃れる。航空母艦に戻れないのは、重量制限で片道の燃料しか積み込めないからだ。
運命の日、昭和17年4月18日を迎えた。ホーネットは日本船に発見されたので、B25全隊は直ちに飛び立つ。1番機をドゥリトル機として、7番機のローソン機は東京に侵入したが、まさか米国が攻めてくるものと思っていない日本人に誰も気づく者はなかった。工業地帯を爆撃したローソン機は中国大陸へ逃げた。
しかしその後本当の危機が彼らを襲う。B25は燃料切れになり、海岸近くに墜落した。乗員は泳いで何とか海岸へたどりつくが、サッチャーを除いて全員が負傷していた。特にローソンの負傷の状態が酷かった。彼らは中国人に救出されるが、周囲は日本兵に囲まれていた。彼らは川を遡って、病院に連れて行かれるが、そこには薬も外科医もいなかった。しかし他の部隊と合流することができて、その中に米軍の軍医がいたため、ローソンは診察を受ける。結果は壊疽で大腿部から切断手術となった。術後のローソンだけ中国にしばらく残されるが、やがてアメリカから救難機が来て、ローソンは中国からワシントンDCに戻ることができた。
雑感
史実にかなり近い作品。実際、日本は1942年の段階で日本近海の制海権を押さえているつもりだったため、全くの無警戒状態であり、京浜及び阪神工業地帯に対するアメリカ軍の「ドゥーリトル爆撃」を許してしまった。東京湾の漁師から通報があったが、当局は全く無視してしまった。零戦編隊が迎撃していたように見えるが、あれは実際に日本軍の訓練にがあり、零戦のパイロットたちはB25を訓練用に用意された敵爆撃機と思ったらしい。
しかしこの爆撃は日本に対して効果的ではなかった。日本によほど近づかない限り、空母からのB25で確実な爆撃ができないのも事実である。空母は爆撃機を運ぶために出来ていない。これ以後、本土爆撃の拠点としてのグァム、マリアナ(サイパン)の回復に重点をおいた攻撃に専念する。
昔見た映画だが、それはカット版だった。対日戦争ということで日本人を悪く言う部分をカットしたと思っていた。
今回初めてノーカット版を見た。思いの外、中国に着いてから米軍機に救出されるまでが長くて、やや地味だった。
ダルトン・トランボが脚色しているがリアリズムを追求したものだ。マーヴィン・ルロイ監督も同様に編集で中国編を長目に時間を取っている。映画としての派手な面白さは後退して、僅か30秒の爆撃の代償が脚一本という風に、反戦ムードを匂わせている。
しかし米国が救った中国と21世気になって激しく対立しているのは笑える。こうなるのが分かっていたのは、当時共産党員だったダルトン・トランボだけだったのではないか。
ヴァン・ジョンソンは劇中で中国沿岸の墜落事故を起こす以前から顔に傷をつけていたが、実は前年に大きな交通事故を起こしていた。
ドゥーリトル中佐役スペンサー・トレイシーは珍しく主演級でないが、トメ役に特別出演待遇として大書されてクレジットされていた。
映画初出演だったローソンの妻役フィリス・サクスターは、ブロードウェイ女優だったが、ハリウッドに招聘された。
彼女はオランダ系アメリカ人だそうだ。ジュリー・アンドリュースのような美人女優だが、出しゃばらない脇役のイメージも強い。一時期小児麻痺を患い休んでいた。
あと、ブレイク前のロバート・ミッチャムが主人公の同僚役で出演している。モデルの人物は半年後に戦死したらしい。
スタッフ
製作 サム・ジンバリスト
監督 マーヴィン・ルロイ
脚色 ダルトン・トランボ
原作 テッド・W・ローソン 、 ロバート・コンシダイン
撮影 ハロルド・ロッソン 、 ロバート・サーティース
音楽 ハーバート・ストサート
キャスト
ドゥーリトル中佐 スペンサー・トレイシー
操縦士テッド・ローソン ヴァン・ジョンソン
砲手デビッド・サッチャー ロバート・ウォーカー
妻エレン・ローソン フィリス・サクスター
副操縦士ディーン・ダヴェンポート ティム・マードック
ディヴィー・ジョーンズ スコット・マッケイ
爆撃手ボブ・クレバー ゴードン・マクドナルド
射手チャールズ・マクルア ドン・デフォー
同僚ボブ・グレイ ロバート・ミッチャム
ショーティ・マンチ ジョン・R・ライリー