井伏鱒二の人情ものを原作に、普段は越後屋的商人役が多い柳永二郎を主役に抜擢した渋谷実監督の傑作映画。
戦後のドサクサ期の「赤ひげ」ものだ。
本日休診の札を掲げて一日のんびりしようとしても、主人公三雲先生の診療所には急患が絶えない。
そして、病人それぞれに人生の問題も抱えていて、先生はカウンセリングまでしなければいけない。
実際は小津監督の「東京物語」の山村聰のように人生にくたびれた医者ばかりだったはずだが、柳永二郎の三雲先生に限ってはどんなにくたびれても希望を失わない。
最後に、戦争のおかげで気が変になった勇作(三國連太郎)に号令を掛けさせて飛んでいく雁に敬礼するシーンは印象的だった。松竹三羽烏だった佐田啓二と鶴田浩二の共演も珍しい。
監督 渋谷実
脚色 斎藤良輔
原作 井伏鱒二
製作 山本武
撮影 長岡博之
出演
柳永二郎 (三雲八春)
増田順二
田村秋子 (湯川三千代)
佐田啓二 (湯川春三)
角梨枝子 (津和野愁子)
鶴田浩二
淡島千景
中村伸郎
十朱久雄
長岡輝子
三國連太郎 (傷痍軍人)
岸惠子
多々良純
本日休診 1957年 松竹