1930年にギャング映画ブームが起き、ハワード・ヒューズはアル・カポネをモデルにしたギャング映画を企画する。そこでアーミテイジ・トレイルの原作の映画化権を入手し、監督にハワード・ホークスを招いた。ホークスは近親相姦などで悪名高い中世イタリアのボルジア家風に描きたかったのだが、脚本家ベン・ヘクトが見事に答えてくれた。
主演ポール・ムニ、共演アン・ドヴォルザーク、カレン・モーリー、ジョージ・ラフト、ボリス・カーロフ。
あらすじ
コステロの用心棒トニー・カモンテ(ポール・ムニ)は対立するロヴォ(オズグット・パーキンス)に買収されてコステロを暗殺してロヴォの幹部になる。野心満々の彼はサウスサイドの対立する親分を暗殺して酒密売の縄張りを奪いイタリア系が占める南側を統一し、さらにギャフニー(ボリス・カーロフ)を親分とするノースサイドにも手をのばす。ギャフニーと争いたくないロヴォはこの計画に反対するが、トニーはマシンガンでバレンタインに警官に化けて大虐殺事件を起こす。
ロヴォはトニーが一人になったところを暗殺するように命じるが失敗し、トニーは右腕リナルド(ジョージ・ラフト)に命じてロヴォを暗殺する。そしてアリバイを作るため、愛人ポピー(カレン・モーリー)を連れてフロリダへ旅に出る。
シカゴに帰ったトニーは妹チェスカー(アン・ドヴォラーク)が男と同棲していると聞いて激怒し、部屋を訪れて出てきた男を射殺する。男はリナルドであり、チェスカーは二人が正式に結婚したこと、兄を驚かせようと黙っていたことを告白した。リナルド殺人事件でトニーは追われる身となり、グアリーノ(C・ヘンリー・ゴードン)の部隊は急行し、トニーのアパートを包囲する。チェスカーは愛する兄に協力するが、跳弾を受けて死ぬ。最愛の妹の死体を見て、トニーはふらふらと部屋から出た所を、警官に射殺される。 彼の見上げる先には”The World is Yours”のネオンサインがきらめいていた。
雑感
ハワード・ヒューズは、先行公開した「犯罪王リコ」「民衆の敵」と比べて、インパクトが強いかなりリアルな映画にした。しかし当時はまだギャングが抗争をしていた時代だったから、倫理的に公開はなかなか認められなかった。
ハワード・ヒューズはヘイズ・オフィスとかなり揉めて、第二監督を使って何度か撮り直すが、それも上映できなかった。製作開始から2年経って、譲歩してハワード・ホークスが二番目にヴァイオレンスの程度が少ないフィルムを選んで上映したという。ただし、実際に上映されたバージョンは他にもいくつかあるようだ。
トニーが愛人ポピーより実妹チェスカのことを愛していたのは明らかで、ラストは兄妹二人でマシンガンを持って、まるで「俺たちに明日はない」を演じていた。
もちろん、この辺りはハワード・ホークスの発案でベン・ヘクトがオリジナル要素として原作に加えた部分だ。
ユナイテッド映画だが、セットはギャングものを取り慣れていたワーナーブラザーズのスタジオを借りて撮影した。
劇中劇はサマセット・モームの「雨」。
スタッフ・キャスト
監督 ハワード・ホークス、リチャード・ロッスン
製作 ハワード・ヒューズ、ハワード・ホークス (クレジットなし)
原作 アーミテージ・トレイル
脚本 ベン・ヘクト
脚色 シートン・I・ミラー
撮影 リー・ガームス 、 L・ウィリアム・オコンネル
配役
トニー・カモンテ ポール・ムニ
妹チェスカ アン・ドヴォルザーク
相棒リナルド ジョージ・ラフト
愛人ポピー カレン・モーリー
ロヴォ オスグッド・パーキンス
ギャフニー ボリス・カーロフ
秘書アンジェロ ヴィンス・バーネット
母カモンテ夫人 イネス・プラン
コスティヨ ハリー・J・ヴェジャー
刑事部長 エドウィン・マクスウェル
グアリノ捜査官 C・ヘンリー・ゴードン