世界初の芸術的ポルノ映画。日活ロマンポルノもこの映画がなければ始まらなかった。
若い娘が歳の大きく違う男に嫁ぐが、何をするにしてもジジ臭くて楽しくない。ついに離婚を決意して実家に帰るが、そこで運命の出会いをする・・・。
監督・脚本はグスタフ・マハティで、1934年のベネチア国際映画祭最優秀監督賞(銀獅子賞の前身)を受賞する。白黒映画。状態はあまり良くない。
主演はヘディ・キースラー(のちにパリに渡ってへディ・ラマールと名乗る)。まだ17歳の子供だったが、すっかり脱いでいる。(ヘアは解禁されていない)エクスタシーのシーンを実演したのも、これが最初である。だから英語の題名は「エクスタシー」。
英語の吹替映画でみたが、元の言語はチェコ語でオーストリア人へディ・キースラーのセリフは吹き替えている。
あらすじ
チェコスロバキアに暮らすエヴァは早く母を失い父の手一つに育てられたが、父親ほど歳の離れたエミルと結婚する。エミルは商人である。情熱も薄く、結婚生活にロマンティックな夢を見ていたエヴァにとって彼との生活は退屈でしかなかった。
夏の日に一匹の虻を殺したエミルに対してエヴァは寒気のするような嫌悪感を抱き、実家に逃げ帰った。エヴァは独身を謳歌し、全裸で裸馬に跨がり、近くの河で泳いだ。馬が逃げたので、エヴァは途方に暮れていると、近くの建設現場で監督として働くパウルが馬を連れて来て、服を渡してくれた。彼は情熱的な青年だったので、エヴァとやがて愛し合うようになり、彼女は生まれて初めて、あの瞬間にエクスタシーを覚えるのだった。
一晩泊まった翌朝に実家に戻ると、夫エミルが昨日から彼女を訪ねてきていた。しかしエヴァの若い情熱(性欲)に応えられないのを知ったエミルは帰途につく。その途中でパウルに出会ったエミルは彼を町まで自動車に乗せていく。エミルはパウルがエヴァの首飾りを持っている事から、全てを理解する。
パウルは宿屋でエヴァと待ち合わせて、共に旅立つ約束をしていた。パウルとエヴァが食堂で踊っているときに、エミルは二階の部屋で拳銃自殺する。夫の死に様を見たエヴァは自分のしたことを理解して、駅のホームに眠るパウルを残して、夜汽車で一人去っていく。
雑感
へディ・キースラーは思い切りの良い脱ぎ方をしている。濡れ場のシーンでは、顔の表情はドアップで映るのだが、さすがに男女の肉体部分の絡みは見られなかった。
映画自体はドイツあるいはソ連映画的だ。サイレント時代を引きずり、台詞を最小限で済ませ、音楽のない象徴的なシーンを多用している。例えば彼女が全裸で馬にまたがるシーンもそうだし、蜂が花に飛び込み受粉をするシーンだとか、馬の銅像など男根をイメージさせたり、虫が灯りにたかるシーンだ。
音楽や台詞が途切れるシーンが多く見られた。フィルムの一部がカットされたまま失われたのだろうか?
この映画は評判になったが、検閲が入って幻のフィルムとなる。映画公開後、彼女はカトリックだったため、オーストリアの教会から非難され親は慌てて結婚引退させた。その相手がオーストリアの武器商人である。この映画と同じような経験をしたらしく、必死の思いでパリまで逃亡した。途中では売春宿に泊まって客を取らされたり、ひどい目にあったそうだ。
彼女は血筋としてはユダヤ人でありながらカトリックに改宗したので、オーストリアがナチス・ドイツに併合されると、身の危険を感じていたのだろう。
パリでルイス・B・メイヤーと出会い、ハリウッド映画でデビューし、「サムソンとデリラ」のヒロインを演じて成功を収める。その一方で、発明家としての才能に花を咲かせる話は映画「美人劇場」で書いた。
キャスト
監督 グスタフ・マハティ
脚色 グスタフ・マハティ
音楽 ジュゼッペ・ベッチェ
撮影 ヤン・スタルリック
スタッフ
エミール ヤロミール・ロゴス
妻エヴァ ヘディ・キースラー
エヴァの父 レオポルド・クラマー
恋人パウル アリベルト・モーグ