監督 原研吉
脚本 野田高梧 八木沢武孝
撮影 武富善男
音楽 浅井挙曄
出演
葛城文子(母)
佐分利信(長男)
三宅邦子(長男の妻)
上原謙(次男)
木暮実千代(次男の妻)
田中絹代(長女)
佐野周二(三男)
高峰三枝子(次女)
徳大寺伸
水戸光子(次女の友人で三男を思っている)
笠智衆
斉藤達雄(長女の別居している夫)
飯田蝶子
原保美
原研吉は小津安二郎の助監督出身。
そのせいか、キャストは小津作品の「戸田家の兄妹」に似ている。
しかしリア王みたいな「戸田家の兄妹」と比べると、親子の断絶とはほど遠く、子どもたちはみな母親思いだ。
そして意に反して母と離れ離れになる。
戦争が始まり、途中から検閲が厳しくなったのであろう。
最終的には戦争を礼賛している。
ネタバレあり—
母葛城文子の夢は、子ども達みんなの近くに暮らし老後を安らかに生きること。
しかし長女の田中絹代と別居中の斉藤達雄がよりを戻し、南方へ帰っていく。
長男佐分利信は北大の農学部に移り、次男上原謙は東南アジアへ風土病の研究で移住する。
後半は一人になる母の身を案じて次女の高峰三枝子が結婚を悩むが、これも収まるところへ収まる。
最後には三男の佐野周二が出征していく。
そして母は昔のお手伝い飯田蝶子(息子原保美が戦死している)に、日本の母の心得を説く。
「子どもは国の役に立ってくれたのだから、立派に母親としての勤めを果たしたのだ」
—
最後の結婚式シーンの仲人のスピーチは、男どもを戦場に送り出すのに利用されただろう。
母の戦争利用だ。母も耐えているのだから、息子達よ、お国のためにがんばれと言うわけだ。
最後の葛城の飯田に対する台詞も時代を感じさせた。
今だって、アラブの自爆テロリストの母親は、そう言うかも知れない。
個人的には売られた喧嘩は買うべきだと思う。
でも戦死したら、日本の母親にはすなおに悲しんでほしい。
最後に一言。
こういう映画が表に出なくなった。
戦争礼賛映画だからって、母親が子の戦死を喜ぶわけがない。
思ってもみないことを言わせる権力に反感を感じるなら、この映画を見るべきだ。