演出:
トム・シャンクランド Tom Shankland
脚本:
ケビン・エリオット Kevin Elyot
なんと、ケン・ラッセル監督(「マーラー」「トミー」)が司祭役で出演していた。
そのせいか、美術とカメラについては、ジョーン・ヒクソンのドラマ(1985年「動く指」)より数段出来は良かった。
しかし、主役のジェリーにジェームズ・ダルシー(「青列車の謎」)を起用して、自殺未遂者に仕立てたのは如何か?
ロンドンへジェリーとミーガンが出かける、エピソードもなかった。
ジョーン・ヒクソンのドラマでは、「ローマの休日」を思わせる素敵なエピソードに仕上がっていたのに。
1985年のドラマを意識しすぎて、原作をやや弄りすぎたと思う。
原作は完璧だった。
ミス・マープルがほとんど出てこない。
探偵小説はできる限り探偵が表に出てこない方が、面白い。
だから今回のドラマ化は、ジェラルディン・マッキーワンを脇役にして、ジェリーの独白中心の脚本にして欲しかった。
前回のドラマがうまく脚色していたから、今回は原作に忠実になってほしかった。
アメリカ資本が参加しているため、そのような脚本は認められないのか?
キャスティングは昨日の「親指のうずき」と比べると、若さでは勝っているが、格では劣っていた。
主人公の妹ジョアンナ役は、化粧の派手なエミリア・フォックス(テレビ「高慢と偏見」)を起用。
ヒロイン・ミーガン役に、タルラ・ライリー(「五匹の子豚」)。あまり好みではない。
家庭教師エルシー役はケリー・ブルックス、役柄は頭の良くなさそうな美人タイプだ。本人は人気モデルらしい。
主人公に家を貸すエミリー役にセルマ・バーロウ(「ミセス・アンダーソンの贈り物」)。
ずいぶんと長い間、この作品は戦後のものだと錯覚していた。
実は「書斎の死体」と同じ頃の戦中派作品だ。
しかし戦争は全く感じさせない。
空襲下のロンドンで人々がクリスティそしてミス・マープルに救いを求めていたのがわかる。