原作は柴田錬三郎、監督は三隅研二、主演は市川雷蔵である。彼の人生を決める三人の女性を藤村志保、渚まゆみ、万里昌代が演じる。

 

 

 

あらすじ

 
小諸藩士高倉信吾は藩主と父の許可をもらい遊学に出かける。三年が経ち帰ってくると「三絃の構え」を身に付けた無双の剣士に成長していた。しかし隣家の池部父子の嫉妬から父と妹を切り殺される。父は死の間際、信吾の出生の秘密を打ち明ける。実母藤子は飯田藩の侍女であったが、家老の命を受け藩主の愛妾を刺殺する。即刻死罪になるところを一年間の猶予を与え、多田草司との間に信吾を儲けさせた。そして一年後、多田を介錯人として処刑された。それから多田は出家し、信吾は小諸藩高倉家にもらわれたのだ。

 
信吾は仇を討ってそのまま出奔する。旅籠で弟主水と逃げる佐代という女と出会う。佐代らが追っ手に襲われたときに、裸になって立ち塞がり、自らを犠牲にして弟を逃がしたが、彼女の潔い姿に信吾は心を打たれる。
信吾は幕府大目付松平大炊頭に仕官して三年経った。信吾は大炊頭に、養父の面影をみる。文久元年(1861)、尊皇派の水戸藩を取り締まるため、大炊頭は信吾のみを連れて水戸へ赴く。そして水戸最後の日に、城内で信吾と引き離された大炊頭は暗殺される。信吾は刺客となった主水を倒し、大炊頭の許にかけつけたが、すでに事切れていた。信吾はこれまでと観念し、その場で切腹する。
 

雑感

 
英題は「Destiny’s Son」となっている。まるで叙事詩のように剣の達人の半生を描いた映像作品だ。静かで上映時間は71分と短いが、中身の詰まった作品だった。ラストは佐代のように斬り合って死ぬ方がいいという意見をよく見るが、全く分かってはいない。この作品は潔い殉死こそが相応しかった。主人を失った後で行う復讐に意味を見いだせなかったからだ。

 
邪剣「三絃の構え」、万里昌代の殺陣ヌード、真っ二つに人体を斬るシーンなど、上映時から話題は盛りだくさんだった。ただし、予告編と本編では、真っ二つシーンは全く変わっている。予告編では両半身が上から真っ二つに割れるのだが、本編は右半身が倒れるところしか見えなかった。

 
渚まゆみは、時代劇しかも武家のお嬢さま役に不慣れで、力不足。配役でもの足りないのは、そこだけ。
 

スタッフ・キャスト

 
監督 三隅研次
原作 柴田錬三郎
脚色 新藤兼人
企画 宮田豊
撮影 本多省三
 
配役
高倉信吾 市川雷蔵
山口藤子 藤村志保
高倉芳尾 渚まゆみ
田所佐代 万里昌代
田所主水   成田純一郎
千葉栄次郎 丹羽又三郎
庄司嘉兵衛 友田輝
松平大炊頭 柳永二郎
多田草司      天知茂
池辺義一郎 稲葉義男
池辺義十郎 浜田雄史
高倉信右衛門 浅野進治郎
牧野遠江守康哉 細川俊夫
 

 

 

斬る 1962 大映京都 三隅研二・市川雷蔵三部作第一作

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