東宝が初代「ゴジラ」を制作していた頃、既に「原始怪獣現わる」で恐竜を復活させていたワーナーブラザーズは、巨大化した原爆蟻を使って放射能批判映画を作っていた。この作品は、放射能汚染の恐怖を描いた名作SF映画の一つとされた。
監督はフランク。・シナトラやエルビス・プレスリー映画をよく撮ったゴードン・ダグラス、主演はトニー賞やゴールデングローブ助演男優賞を受賞したことのある名脇役ジェームズ・ホイットモアと、映画「34丁目の奇蹟」でアカデミー助演男優賞(1947)を受賞したイギリス人俳優エドモンド・グウェン。
あらすじ
ニュー・メキシコのピータースン巡査部長(ジェームズ・ウィットモア )は砂漠を警邏中、口のきけない少女と無残に破壊されたキャンピングカーを発見した。両親が殺されて、少女は生き残りと考えられた。
次に近くに住む住民を訪ねると、地下室でその死体を発見した。ところがピータースンが部下を残して警察署に報告に行っている間に部下は消えてしまった。謎の足跡をFBI本部に送ると、合衆国政府は何故か生物学者メドフォード博士(エドモンド・グウェン)と娘のパット博士(ジョーン・ウェルドン)を送った。博士は原爆実験のせいで蟻が巨大化したものだろうという。博士の推察どおり、パットが巨大蟻を一匹発見する。
早速、周囲に巣を探すと巨大な穴とそこから顔を出す巨大蟻がいた。博士のアイデアで軍は火器を利用し蟻を穴の底に追い詰め、シアンガスを巣穴に送り込んで殲滅する。しかし新女王蟻が2匹だけ巣立った後だった。
政府と軍の合同会議で新女王蜂を発見次第焼き殺さないと、無尽蔵に繁殖し近いうちに人間は滅亡する事が明らかにされ、西海岸一帯を捜索することになった。一匹は何と太平洋の船上に現れたが、船ごと沈めてしまった。
しかしもう一匹はロサンゼルスの地下水道網に定着し繁殖をはじめていた。ある日、親子で遊びに出かけて父親だけ死体で発見され子供たちは行方不明になる事件が起きた。付近の下水を捜索の結果、地下に巨大蟻が群生していることを発見し、軍を出してついに女王蟻の卵ごと焼き尽くしたが、ピーターソンは子供たちを助けようとして犠牲になった。
雑感
現代から考えると、たまたま事件に関わった警官やFBIが軍とタスクフォースを組んで解決に当たるなど、ご都合主義で良くある話だ。しかし昭和29年の時点では、まだよく考えられた話だったろう。
メドフォード役のエドモンド・グウェンが最後に将軍を前にして、(戦争勝利のために原爆を開発したが)これからも何が起きるか分からないと、述べている。アメリカ自身に対する最大の皮肉だったのだが、今や日本にその言葉が向けられている。
当初は合成映像で蟻の動きを実現する予定だったが、当時の技術では映像が平面的になって安っぽくなるし、作ってみた巨大蟻の模型が格好良すぎたので、実写としたそうだ。
また、原題”Them!”は、ショックで口がきけなくなった少女が蟻酸の匂いを嗅がされて、蟻に襲われたことを思い出し「奴らよ(Them!)」と言ったことから取っている。
スタッフ
監督 ゴードン・ダグラス
製作 デイヴィッド・ワイスバート
原作 ワーシンング・イェイツ
脚色 テッド・シャーデマン 、 ラッセル・ヒューズ
撮影 シド・ヒコックス
美術 スタンリー・フライシャー
[amazonjs asin=”B01561XM34″ locale=”JP” title=”放射能X Blu-ray”]
配役
ピーターソン巡査部長 ジェームズ・ホイットモア
メドフォード博士(父) エドモンド・グウェン
メドフォード博士(娘) ジョーン・ウェルドン
ロバート・グラハム(FBI) ジェームズ・アーネス
オブライエン将軍 オンスロー・スティーヴンス
キルビー少尉 シーン・マックローリー
口のきけない少女 サンディ・デスチャー