1972年の英米合作ミステリ映画。 ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督の遺作。
アンソニー・シェーファーのトニー賞受賞舞台「探偵・スルース」をシェーファー自ら脚色して映画化した。
主演はローレンス・オリヴィエとマイケル・ケイン。
あらすじ
有名なイギリスの推理作家アンドリュー・ワイクは妻の愛人である美容師マイロを自宅に呼び寄せる。妻マルガリータは金のかかる女なので、マイロと結婚しても経済的に彼女を満足させられない。ワイクは宝石類を金庫に保管しており、保険をかけていたので、マイロに宝石を盗み出して海外でマルガリータと暮らせと唆す。要するに保険金詐欺で、ワイクは愛人ティアと一緒になるつもりなのだ。完全犯罪を成し遂げるためには万全の注意がいると、ワイクはお膳立てを整える。マイロはピエロの格好をして屋敷に侵入し強盗に見せるため屋敷を荒らす。そこでワイクの態度はがらりと変化して、マイロに銃を向ける。今殺せば正当防衛だと言って、ワイクは拳銃の引き金を引き、マイロは階段から転落する。
数日後ワイクの屋敷に老刑事が訪ねてきて、行方不明のマイロを捜していると言う。ワイクは、マイロに向けて空砲を射ったので彼は気を失ったが、その後に気付いて無事家に帰ったと答える。ところが刑事は居間に弾痕を発見し、ワイクを殺人罪で追い詰める。ワイクは冷や汗を流すが、老刑事が変装を解くとマイロが現れた。マイロはワイクに逆襲したのである。しかもマイロはティアを殺して、証拠品を屋敷内に隠した、15分したら、本物の警察がやってくると言う。またワイクは慌てて家中を探し回って、証拠品を残らず見つけた。
午後10時になりチャイムが鳴るが、警察でなくマイロが現れた。ティアの協力を得てマイロが仕組んだ「ゲーム」だったのだ。マイロはワイクが不能であること、マルガリータがワイクと別れることを告げた。ワイクは拳銃に実弾の詰めて、マイロに撃ち込む。その時、チャイムの音がして警察がやってくる。
雑感
完全な二人芝居だ。他の俳優は写真でしか登場しない。お互いに自分の醜悪さを晒す、英国らしいお芝居だった。
イギリス人の悪趣味でいやらしい部分、例えば英国人が常に他人を差別し、差別されることを忌み嫌っている点が、非常によく描かれている。考えれば、英国人が架空の殺人事件を推理小説としてパズルゲームにしているのも趣味が悪い。
マイロ(マイケル・ケイン)が老刑事に扮装しているのは丸わかりだ。舞台でもわかるだろう。私にはこの映画が、前評判ほどには面白くなかった。
2007年に「スルース」として再映画化された際には、マイケル・ケインが年老いた作家役で出演している。
スタッフ
製作総指揮 エドガー・J・シェリック
プロデューサー モートン・ゴットリーブ
監督 ジョセフ・L・マンキーウィッツ
原作・脚本 アンソニー・シェーファー
撮影 オズワルド・モリス
音楽 ジョン・アディソン
キャスト
アンドリュー・ワイク ローレンス・オリヴィエ
マイロ・ティンドル マイケル・ケイン