小学生の男女の淡い恋心と別れを描いた少年少女ドラマ。
監督は岩井俊二。助監督を行定勲が担当している、
主人公を演じるのは、山崎裕太と奥菜恵。共演は麻木久仁子。
もともとはフジテレビで放送されていたテレビドラマシリーズ「if もしも」の最終回として製作され、1993年8月26日に放送されたもので、テレビドラマとして初めて日本映画監督協会新人賞を受賞した作品である。
二年後、45分の劇場版映画に再編集され、テレビ版のストーリー・テラーであるタモリの出演シーンが全面的にカットされ、テレビ版にはなかったいくつかのカットが追加されている。
あらすじ
夏休み、小学生のノリミチは登校日に学校に行く。ノリミチが好きな同級生ナズナは、母が離婚するため、二学期から転校することが決まっているが、このことは同級生の誰にも話していない。
放課後、プール掃除当番だったノリミチとユウスケは、掃除せずにプールで遊んでいた。ナズナも当番だったが、プールサイドでぼーっとしていた。
ユウスケは、ノリミチと50メートル競泳を行い、勝った方がナズナに告白する賭けをした。ノリミチの方が水泳は得意だったが、ターンの時にかかとをプールに打つけてしまい、ユウスケが勝つ。そこへ、ナズナがホースの水を掛けてきて驚かす。そして、ユウスケに今夜の花火大会に二人きりで一緒に行こうと彼女から誘って来る。
下校時、ノリミチとユウスケに合流した悪友ジュンイチたちは、花火は横から見ると丸いかどうかで議論していた。そこで今夜、灯台から花火の形を確認することになった。
ノリミチが待ち合わせしているユウスケの部屋に上がろうとすると、ナズナが、ユウスケの出て来るのを待っていた。しかし、ユウスケは悪友たちと花火大会に行くつもりだ。
ナズナは、ノリミチにさっきの競泳に勝った方を誘おうと思っていたと言い、「君を誘ったらどうした?」と尋ねた。ノリミチは、「裏切らないよ」と返事をする。
そこへ突然ヒステリー状態のナズナの母親が現れ、嫌がるナズナを連れて家に帰った。ノリミチが競泳に勝っていたら、どうなっていただろう?(続く)
雑感
「if もしも」シリーズは、いまだにスペシャル番組として続いている「世にも奇妙な物語」の第一シリーズが終了した後番組である。だから、ストーリー・テラーとして続けてタモリが登場する。
でも岩井俊二監督は、タモリの登場シーンを演出していなかったのだろう。そこをカットして、テレビ版で時間の関係でカットした部分を復元したようだ。
岩井俊二監督の作品は、「Love Letter」「四月物語」や「花とアリス」など甘酸っぱいけれどほろ苦でハッピーエンドなドラマが多い反面、「リリイ・シュシュのすべて」のように子供の持つ無邪気な恐ろしさを描くものがある。
この作品は、前者に属している。別れる際、ナズナは、ノリミチに嘘をつく。その言葉は、ノリミチの記憶に花火の記憶と一緒になって一生残るだろう。
奥菜恵は、この頃14歳である。大人っぽい小学生をやるにしても、色気が強すぎる(日本舞踊をやっていた訳でもないのに)。それだけに男の子役たち(NHK朝ドラの相手役小橋健児もその中にはいた)より強烈な印象を残す。当時はすでに、もう男の子と付き合ってたんじゃないかなあ。こういう美しすぎる女の子は、安達祐実主演ドラマ「ガラスの仮面」で姫川あゆみを演じた「松本恵」(現・莉緒)もそうだが、旬が短い。その点、「Love Letter」の回想シーンに子役で出演していた酒井美紀は、今妻であり母であり、大学院に通っているが、未だに新鮮だ。
それから、フジテレビが当時はまだバブル時代の残像を引きずっていて、司会やレポーターが本業の麻木久仁子や石井苗子を芝居に引っ張り込んでいたことも思い出す。各人ともに、最初はひどい大根役者だったが、経験を積むに従ってそれなりにものになってきた。しかし、最近は女優としての出番が少なくなった。石井光子に至っては、2016年に日本維新の会で参議院議員に(任期6年)なっている。
なお、助監督にはのちに監督になった行定勲は、二度のベルリン国際映画祭批評家連盟賞を受けている。
2015年にはアニメ映画化もされている。
スタッフ
監督、脚本 岩井俊二
企画 小牧次郎、石原隆
プロデューサー 原田泉
撮影 金谷宏二
音楽 REMEDIOS
助監督 行定勲、島田剛、桧垣雄二
キャスト
ノリミチ 山崎裕太
ナズナ 奥菜恵
ユウスケ 反田孝行
ジュンイチ 小橋賢児
カズヒロ ランディ・ヘブンス
ミノル 桜木研人
ナズナの母 石井苗子
ノリミチの母 深浦加奈子
ノリミチの父 山崎一
ユウスケの父 田口トモロヲ
受付の看護婦 中島陽子
三浦先生 麻木久仁子
同僚の教師 光石研
マコト 小山励基
ヤスさん 酒井敏也
おでん屋 こばやしふしまさ
おでん屋の客 蛭子能収
***
(第二の選択肢)
競泳に勝ったノリミチは、ナズナに花火大会に誘われる。しかし待ち合わせ場所に行くと、彼女はノリミチの手を握り「駆け落ち」と言ってバスに乗り込む。ノリミチは、ナズナが家で嫌なことがあったのだと薄々気づいたので、付いていくことにした。バスを降りたナズナは、駅で電車を待つが、電車が着いたら気が変わり、帰りのバスに乗り込む。
暗くなってから、ノリミチとナズナは学校のプールに潜入し、遊んだ。ナズナは「今度会えるの二学期だね」と言って、ニコニコして帰っていった。
その頃、ユウスケたちは徒歩で灯台に着いたときには、花火大会は終了していた。夏祭り会場を通ったノリミチは、彼氏とデートしている、担任の三浦先生に出会った。ノリミチは先生に、花火を横から見たら丸いのかと尋ねた。先生は、ノリミチに花火職人ヤスを紹介してくれる。ヤスは、小さな花火を一発だけ上げてくれた。そして、ノリミチは花火を真下から見ることができ、灯台にいたユウスケたちは横から見ることができた。