惣領智子の変わった苗字は元夫惣領泰則のものだ。離婚後も再婚後も使っている。
この惣領泰則という人が偉大な人物だった。まず60年代末ごろシングアウトと呼ばれる男女混声コーラスバンドを率いてデビューした。5TH DIMENSION 辺りをイメージしていたのだろうか?デビュー曲はかぜ耕二作詞中村八大作曲涙をこえて」、これは大ヒットしたがNHKの「ステージ101」が始まってシングアウトも参加してそちらのテーマソングに使われた。惣領泰則はアメリカ進出するため、「ステージ101」を卒業するがこの曲は置き土産になり今でもよく耳にする。

1971年に日系アメリカ人高橋真理子らとBrown Rice というバンドを結成し、MGMレコード社と契約して活躍した。
1977年からは日本でソロアルバムや、Jim Rock Singers やジムロックスと組んでアルバムを出している。いずれも80年代AORを先取りしたようなアメリカ直輸入音楽だった。
惣領智子は当初国立音大生だったが、惣領泰則と結婚しBrown Rice のメンバーとして渡米して活躍していた。日本に帰ってからまず1976年にソロとしてデビューアルバムを発売する。そしてシティポップス色を強く出して1977年に「City Light by the Moon Light」を送り出す。さらにその翌1978年も「TOMOKO NOW AND THEN」を発売する。その一曲目に入っていたのが「終わりにない旅」だ。実力を要求される曲だが楽々歌っている。TBS木曜座大原麗子、近藤正臣主演「愛がわたしを」の主題歌に抜擢されてヒットした。

これは惣領泰則作曲及川恒平作詞で惣領泰則が学んできたアメリカ音楽を題材にしているが、いわゆる80年代シティポップスとは少し違う。おそらく惣領泰則は80年代のポップスを力のある歌手が歌えばもう少しディープな音楽になる未来を予想していたのではないか。

この頃から惣領智子はソロ活動に限界を感じていたのか、プロデューサーの惣領泰則の戦略かわからないが、TINNAというプロジェクトを動かし始めた。Brown Rice でボーカルだった高橋真理子(真梨子ではない)と惣領智子という実力派シンガーを中心にしたコーラスバンドに育てようというのだ。まず78年に混声コーラス主体で全日空テーマソング「SHINING SKY」を収録する。それがラジオ「全日空ミュージックスカイホリデー」主題歌として永年使われたバージョンである。しかし79年以降のTINNAのライブでは女声コーラス曲になっている。

 

まだ78年の時点では、当時「Mr. Summer Time」が大ヒットしていたサーカスと同じような混成コーラスにするか迷いがあったようだ。しかしこの後サーカスと差別化するため79年から女性デュオという形に固定し、シティポップス路線を突き進んだというのが正解か。

しかし81年にTINNAは解散し、おそらくその頃惣領は離婚したのだろう。惣領智子は89年に一枚アルバムを作り、91年には新しい夫と再婚する。その後沖縄に移って2004年にアルバムを一枚出している。最近はヨガ瞑想の本を書いてインストラクターをしているようだ。

惣領智子の歌を初めて聞いたのは中学生の頃だろうか?TINNAになる前から知っていたような気がする。確かにTINNAは部分的に成功したのだが、惣領智子のキャリアにプラスになったのかな。彼女の本質はシティポップスではなかった気がする。

 

リンク:

全日空ミュージックスカイホリデー 滝良子(そらまめ)1983

 

惣領智子 「終わりのない旅」 Tinna 「SHINING SKY」1978

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