名脚本家田村孟の唯一の監督作品。
松竹ヌーベルバーグのスター炎加世子主演。
渡辺文雄、津川雅彦共演。
白黒映画である。
地方の小都市の、飯場が舞台だ。
県議の次男坊津川雅彦は、兄を心中事件で失っている。
その心中の生き残りが炎加世子だ。
津川は炎を憎み、嫌がらせを続ける。
一方、炎はどもりの作業員渡辺文雄と結ばれるが、心までは許さない。
実は津川も炎を愛していた。
炎がこの町を出て行くと言ったとき、津川はこの町に残ってくれと嘆願するが、断られる・・・
—
身内の心中相手を愛してしまう。
おしゃれな若者映画なら今でも通用する主題だが、
親父世代の俳優として見慣れた津川雅彦や渡辺文雄がやっていると、
われわれの世代にとしては、少し違和感があった。
また、俳優全体にやる気を感じなかった。
いかにも「演技でアクションしてます」という感じだ。これも演出だろうか?
炎加世子は演出のせいか、大島渚監督「太陽の墓場」ほどのエネルギー感はなかった。
しかし演技力は若干向上していると思った。
津川雅彦の妹役月丘昌美は妙に大人っぽかった。と言うか、子どもらしさに欠ける。
監督田村孟は東大文学部卒、当時は松竹の社員であった。
大島渚監督の脚本を中心に、長谷川和彦監督の「青春の殺人者」、篠田正浩監督の「瀬戸内少年野球団」の脚本も手がける。
この映画だけでは監督として才能があるかどうか、わからないが、本人は二度とメガホンを取らなかった。
Related posts:
悪人志願 1960 松竹