(☆)復員した夫と待ち侘びてアパートを手に入れた妻が新米大家として奮闘するアパート・コメディ映画。20世紀フォックスに移籍して以来、マリリン・モンローが出演者中序列四番目になっているが、前作「素晴らしき哉、定年!」より確実に出番が増えている。
監督はジョセフ・ニューマン、脚本はI.A.L.ダイヤモンド。
主演はジューン・ヘイバーとウィリアム・ランディガン。
共演はフランク・フェイ、マリリン・モンロー。白黒映画。
あらすじ
ジムがパリから復員してアパートに帰ってくると、妻コニーはアパートを買い取ってその大家になっていた。それは、ジムが著作活動に専念できるようにという愛情からの好意だった。しかし、コニーの思惑は外れて、アパートの修繕に多大な費用がかかってしまう。
その頃、骨董品の鑑定をしているという老紳士チャーリーがアパートに住むようになる。入居した途端に彼は、隣家の貧しい未亡人イーディーにアプローチを始める。
さらに、ジムのパリ時代の同僚ボビーにも部屋を貸すことにしたのだが、その顔とスタイルを見てコニーは仰天する。婦人部隊にいた、見目麗しい女性だったのだ。
ある日、住宅局の役人がアパートを監査に来て、剥き出しの配線が規定違反なので15日以内に交換しないと、居住に適さないアパートとして閉鎖すると通告した。
その夜、チャーリーとイーディは結婚を発表する。一方、ジムは、電気屋から800ドルの見積もりをもらうが、とても今すぐ融通できる金額ではなく、アパートの売却を覚悟する。
ジムはチャーリーから好意で800ドルを融通されるが、このアパートに修繕しなければいけない場所が他にもあるので、やはり売らなければならないと考えている。
それに対して、コニーは売却に反対したので、ジムはコニーと派手な夫婦喧嘩をして、部屋を飛び出す。ハンモックで寝ようとするが、紐が切れてしまう。ボビーが今晩はたまたま留守なので、彼女ぬ部屋に入り込みソファで寝てしまう。
翌朝、ボビーは帰ってくるとジムが寝込んでいるが、構わず入浴する。ジムは目覚めて、ボビーの部屋からそっと抜け出すが、それをコニーに見つかってしまう・・・。
雑感
細かい点に粗はあるが、プロット自体は面白い。フランスのアパート映画や日本の長屋噺と違って、貧乏人の中に紛れて一人の小金持ちが住んでいて、大家が疑惑を抱くと言う設定にアメリカらしさがある。
前作では特に見せ場がなかったマリリン・モンローは、今作では入浴シーンがあり、お色気要員として起用されている。主役コニーを演じたジューン・ヘイバー(日本に紹介されている映画は少ない)は、小柄な女優だったので、大きなスクリーンでは完全にマリリンに食われていた。
マリリンが身につけた、何事にも微笑で返すミステリアスな雰囲気は、活かし方によってすごく化けそうだ。主役ウィリアム・ラングレンも監督ジョセフ・ニューマンも、マリリンをもっと使った方が、面白くなると思っていたんじゃないかな。
フランク・フェイとリアトリス・ジョイは戦前からのスターだ。奇しくもこの作品以後、目立った映画出演は無いらしい。
ボードビリアンのフランク・フェイの場合、トーキーになって頭角を表したが、共演者の受けが悪くて、戦後になるとキャスティングしてもらえなくなったようだ。
リアトリス・ジョイは、1920年代から失われた世代のアイドル的存在であった。トーキーになった時、一度映画界から離れた。1939年に映画界に復帰したが、好きなものだけ選んで出ていたようだった。
スタッフ
監督 ジョセフ・ニューマン
脚本 I.A.L. ダイアモンド
原作 スコット・コーベット “The Reluctant Landlord” (気の進まない大家さん)
製作 ジュールズ・バック
撮影 ロイド・アハーン
音楽 シリル・モクリッジ
キャスト
コニー・スコット ジューン・ヘイヴァー
ジム・スコット(夫) ウィリアム・ラングレン
チャーリー・パターソン(老紳士) フランク・フェイ
ロバータ・スティーヴンス(モデル) マリリン・モンロー
ジャック・パー(ジムの友人) エド・フォーブス
イーディ・ゲイナー(未亡人) リアトリス・ジョイ
ジョージ・トンプソン(入居者) ヘンリー・カルキー
***
しかし、コニーが受けた衝撃はそのことでなく、チャーリーが結婚詐欺師でFBIから追われていることが新聞に掲載されたことだった。すぐにチャーリーを探して警察が踏み込んでくる。彼はイーディこそ最後に愛した女性だと告白し、警察に逮捕される。
翌日、チャーリーがジムに800ドル渡して逃亡を幇助させたと嘘の告白をしたため、ジムの雑居房に入れられる。そこでチャーリーは「明日君は留置所から無罪放免されるから、私の半生を本にして出版してほしい」とジムに依頼する。
その後、18ヶ月の実刑を終えてチャーリーは、出所してイーディとの間に双子を成すに至った。ジムとコニーは、チャーリーの電気が重版を重ね、印税でリフォームしたアパートで幸せに暮らした。