アルセーヌ・ルパンを名乗る怪盗の活躍を描く冒険活劇。「現金に手を出すな」のジャック・ベッケルが監督し、主演は当時人気の歌手コメディアンだったロベール・ラムール、共演はリゾレッテ・ブルファユベット・ユー
 

 

 

あらすじ

 
第一次世界大戦前のベルエポック1910年、フランス首相邸で舞踏会が開かれていた。ドイツ男爵夫人ミナ・フォン・クラフト(リゼロッテ・プルファー)、パリ警視総監、イタリア外交官ディ・パロリニらが参加していた。突然灯が消え、壁にあった数枚の名画が消え、残った一枚に怪盗アルセーヌ・ルパンの名刺が残された。
その後、大農園主という老人がカルティエ宝石店に現れ、娘の結婚祝いに宝石を所望した。クレリシイ支配人が宝石を持ちホテルを訪れると、老人は出てきて娘に見せると言い、見事に持ち逃げしてしまう。これもルパンの犯行声明があった。娘だと思ったのは、マニキュア師レオンティヌ(ユゲット・ユー)だった。
疑われて無職になったレオンティヌの前に再び老人が現れ、シャルル・ドゴール美容院を紹介してくれる。彼女は亡父の愛用した手錠を用意して店に向かった。そこににラロシュと名のる裕福な男が来て、レオンティヌが担当する。彼女はラロシュの手が老人と同じなのに気づき手錠をかけ、警察に突き出す。しかしラロシュは各界の有名人と知り合いであり、冤罪事件として釈放される。
ドイツのミナ男爵夫人は彼こそ怪盗ルパン(ロベール・ラムール)であることを見抜いていた。彼女はドイツのヴィルヘルム二世(O・E・ハッセ)の側近であった。王宮内には彼女の祖父と父が考案した秘密金庫があったが、皇帝はルパンを招いてテストすることを思いつく。ルパンが拉致されて、皇帝と面会し秘密金庫を見つけた場合の成功報酬まで契約する。ルパンは難なく金庫を見つけるが、彼女一家の信頼を守るために、金庫には目もくれず、皇帝の別の金庫から現金を奪い遁走する。彼の魅力のとりこになっていたミナは、彼を国境に逃してやった。
再び諜報活動でパリに出張したとき、レストランでマハラジャの宝石が盗まれる事件が発生するが、年老いた旧字が消えたことを知っているのはミナだけだった。
 

雑感

 
企画が通らず空き時間にベッケル監督が撮ったプログラムピクチャーラムールのような細身で黒髪タイプが、フランス人の考えるルパン像らしい。案外モンキーパンチの「ルパン三世」は的を射ていた。
ベッケル監督はとくに原作を設けず、考案した三つのエピソード(首相所蔵の絵画、宝石、ドイツ皇帝)を組み合わせて映画を作った。
ジャン・ルノワールの弟子であるベッケル監督はヌーベルバーグの若手監督にも尊敬された人だったが、この作品に関しては評判が悪かったようだ。しかし苦心の跡は、手の感触でルパンだとバレたり、香水の匂いで秘密の場所を見つけたりする点などに見える。

 

 

スタッフ・キャスト

 
監督 ジャック・ベッケル
製作 ロベール・セッフェルト
原作 モーリス・ルブラン
脚色 ジャック・ベッケル 、 アルベール・シモナン
台詞 ジャック・ベッケル 、 アルベール・シモナン
撮影 エドモン・セシャン
音楽 ジャン・ジャック・グリュネンワルド
 
配役

ラロッシュ ロベール・ラムール
ドイツ皇帝 O・E・ハッセ
ミナ    リゼロッテ・プルファ
エミル   アンリ・ロラン
ポル    ルノー・マリー
レオティヌ ユゲット・ユー
ドゥフュール刑事 ジョルジュ・シャマラ
 

怪盗ルパン Les Aventures d’Arsene Lupin 1957 仏伊合作 東宝配給

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