日本国内では「怪奇!壁ぬけ男」の題で上映され、その後テレビ映画劇場では「SF4次元のドラキュラ」と題を改められて放送された。けばけばしいカラー映画。
破茶滅茶な4次元理論を使って、壁の向こうに抜け出せる性質を持つようになった研究者が、欲望に勝てず犯罪に手を染めていき自滅する物語。
監督はアーヴィン・S・イヤワース・ジュニア、製作はSF名プロデューサーのジャック・H・ハリス。主演は名優ロバート・ランシング。共演はリー・メリウェザー(「バットマン・ザ・ムービー」のキャットウーマン)、ロバート・シュトラウス(ハリウッドの名脇役)。さらに無名時代のパティ・デュークが端役で出ている。この3年後に「奇跡の人」でヘレン・ケラーを演じてアカデミー助演女優賞を受賞した。
あらすじ
弟トニーは研究所を燃やしてしまい首になり、兄スコットを頼って原子力研究所を訪ねる。そこで同僚のリンダ、ロイと出会う。とくにリンダは兄の婚約者だったが、トニーに興味を持った。
スコットは研究を完成させて新しい金属を一つ発見するが、手柄はいつも所長のカーソンが独り占めである。リンダやトニーは自分の手柄を主張すべきと言うが、スコットは欲がない。ところが、弟が新発見した鉄に刺さった鉛筆を見てから、野心が湧いてきた。弟は一度しか成功した事はなかったが、スコットは何度も成功させてその上、壁を通り抜けられるようになる。スコットは夜中に銀行を襲い大金を手にするが、翌日鏡を見ると1日の間に急に老けてしまった。そこで医師を訪ねるが、医師に触ったせいで瞬時にして老衰死させてしまう。夜の女を拾っても、口づけした途端に相手の女は老衰死する。トニーの論文を盗んだのがカーソンだと思い、カーソンを殺してしまい、真犯人がロイと分かると、今度はロイを殺す。もはや殺人鬼となってしまった。トニーは警察に協力して、兄を殺そうとするが失敗して逃げ出す。しかしリンダは一人で立ち向かい、抱きついてきたときに胸にナイフを刺す。スコットは何とか逃げようとして血を流したまま壁の中に入るが、果たして死んだのだろうか。
雑感
科学考証はなっていない。脳波が強いと透過できるなんて、放射能に被曝して透明人間になるレベルの話だ。しかも壁ぬけ男に抱きしめられたら、瞬時にして老衰死するなんてあるわけがない。
非科学的なものと割り切れば、ホラーとしては面白い。
さらにビッグバンド・ジャズのOPで始まり、全体的にジャズ中心で、音楽がすごく格好良い。
日本で「怪奇大作戦」が放送開始されたときの第一話が、「壁ぬけ男」だった。劇団四季の演目である「壁抜け男」でなく,題名に「壁ぬけ男」を使ったあたりは、この映画のことを念頭に置いていたことが明らかだ。
スタッフ・キャスト
監督:アーヴィン・ショーテス・イヤワース・Jr
製作:ジャック・H・ハリス
脚本:セオドア・シモンソン、サイ・チャーマク
撮影:テオドール・J・パール
音楽:ラルフ・カーマイケル
キャスト
ロバート・ランシング 科学者スコット・ネルソン
ジェームズ・コンドン 弟トニー・ネルソン
リー・メリウェザー 恋人リンダ
ロバート・ストラウス スコットの部下ロイ
エドガー・ステーリ カーソン所長
パティ・デューク リンダの妹マージョリー