アメリカ人ウィリアム・アイリッシュの1942年作推理小説幻の女」を元に、バーナード・C・ショーエンフェルドが大胆に脚色し、ロバート・シオドマクが監督した。

主演はフランチョット・トーン、エラ・レインズ
共演はアラン・カーティス、トーマス・ゴメス、フェイ・ヘレム、アウロラ・ミランダ。白黒映画。

ストーリー

スコット・ヘンダーソンは、妻マーセラと言い争ってアパートを飛び出して、入ったバーで素敵な帽子を被った女と出会い、ショーを見に行った。ショーが終わると帽子の女は、名乗らずにそのまま去った。
アパートに戻ると、三人の警察官がいて、妻が絞殺されていた。バージェス警部は自分のアリバイを証明できないスコットを検挙する。証人たちは、ヘンダーソンがその夜一人でいたと証言したので、彼は死刑宣告を受けた。

彼の秘書キャロルは、ヘンダーソンの無罪を証明するため、帽子の女を探した。まずはスコットと帽子の女が出会った店のバーテンダーだ。しかし彼は、誤って車にはねられて死ぬ。
そこで、思わぬ援軍が現れた。スコットを逮捕したバージェス警部だ。彼は、スコットの裁判での態度に感銘を受け、彼を助け出そうとしていた。キャロルは、ショーでドラムを演奏していたクリフが帽子の女に色目を使っていたと聞く。そこでクリフを誘惑して聞き出そうとするが、バージェスに電話をかけている間にクリフは絞殺されてしまう・・・。

雑感

上記のあらすじは、筆者が幾分リライトしている。
それは、実際の映画ではクリフの殺人シーンで真犯人の顔が見えてしまい、誰なのかわかるからだ。そのために、この映画は原作の持ち味を半分も発揮せず、探偵映画でなく単なるサスペンス映画になっている。
原作小説は、連続殺人事件が起きるが、最後の瞬間にキャロルとバージェスの連携プレーにより真犯人が明らかにされる大ドンデン返しがある(だから、名作なのだ)。

フランチョット・ドーン(呼び方は仏語読みでフランショーが正しい)は、1930年代のイケメン俳優であり、出演者の中で最も有名である。30年代はMGMで活躍したが、年齢を重ねるにつれて観客が入らなくなり、ユニバーサルに移籍した。そこでは二枚目だけでなく、犯人役も演じるようになった。この作品では、映画の真ん中あたりで初めて登場するが、出演者の序列はトップである。

歌手役のアウロラ・ミランダは、ハリウッドでの活躍した歌手カルメン・ミランダの六つ違いの妹である。二人の歌は、よく似ていた。カルメンが当時アメリカで最も高給取りの歌手と言われていたから、その身代わりとして妹も忙しくしていたようだ。しかし結婚した後、戦争も終わってブラジルに帰ってしまう。姉は1955年に不摂生が元で亡くなるが、彼女は90歳まで生きていた。

ロバート・シオドマクは、フィルム・ノワールを得意とするユダヤ系ドイツ人監督で、戦前にアメリカに移り、佳作を続け様に作り出した。この次回作で、チャールズ・ロートンと今作品でも主演したエラ・レインズを迎えて映画「容疑者」を取り、さらにドロシー・マクガイヤを主演に迎えて映画「らせん階段」を撮っている。

エラ・レインズは、飛び抜けた美人女優でなかったが、戦中から戦後にかけて主演女優として活躍した。日本で公開されている作品は、少ない。

スタッフ

製作  ジョーン・ハリソン
監督  ロバート・シオドマク
脚色  バーナード・C・ショーエンフェルド
原作  ウィリアム・アイリッシュ
撮影  ウディ・ブレデル
音楽  ハンス・J・サルター

 

キャスト

ジャック・マーロウ(芸術家)  フランチョット・トーン
キャロル・リッチマン(スコットの秘書)  エラ・レインズ
スコット・ヘンダーソン死刑囚  アラン・カーティス
エステラ・モンテイロ(歌手・ダンサー)  アウロラ・ミランダ
バージェス警部  トーマス・ゴメス
アン・テリー(精神疾患の女)  フェイ・ヘレム
クリフ(ドラマー)  エライシャ・クック・ジュニア
バーテンダー  アンドリュー・トームス

***

ヘンダーソンの親友ジャック・マーロウがブラジルから帰ってきた。彼は、ヘンダーソンの妻が殺された日に彼女と会っていたが、犯行時刻にはブラジル行きの飛行機に乗っていた。
キャロルとバージェス、ジャックは、スコットが帽子の女と行ったショーの打ち上げに忍び込んだ。そこで歌手が女と同じ帽子を被っていたのだ。歌手に会えなかったが、帽子のブランドがわかった。そこはオーダーメイドの店で、買った客がアン・テリーだと分かった。キャロルとジャックがアンを訪ねると、彼女は帽子を渡してくれた。
キャロルは、これでスコットの無罪証拠が見つかったと喜ぶが、
ジャックが気分が悪いというので、彼の部屋に立ち寄る。彼女はバージェスに早く知らせようと警察に電話をかけるが、彼は出かけていた。そして部屋の扉を開こうとすると開かなくなっている。マーロウが閉じ込めたのだ。
彼は、マーセラと不倫をしていたが、彼女がスコットと別れてくれないので、マーセラを殺してしまった。その罪をスコットに被せるために証人を買収し、喋りそうになると殺したのだ。ジャックは、アンの居場所をキャロルより先に見つけることができなかったので、キャロルを殺すことにしたのだ。
キャロルが危機一髪のところで、駆け付けたバージェスたちに救出され、マーロウは窓から転落死した。スコットは、晴れて無罪放免となり、キャロルに求婚するのだった。

幻の女 Phantom Lady (1944) ユニバーサル製作・配給 セントラル映画社国内配給(1951)名作ミステリ小説のサスペンス映画化

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